チーム名の著作権

Google Newsで「著作権」で記事検索したところこんな記事がひっかかった。

asahi.com朝日新聞社):ガーナの「ガンバ」資金難 成績も低迷、存亡の危機に - スポーツ
http://www.asahi.com/sports/update/1226/TKY200912260240.html

湘南ベルマーレサポーターである私にとっては興味深い記事だった。
ガーナにある「ガンバ」というサッカーチームが資金難になっているという記事だが、そのガーナの「ガンバ」というチームは、Jリーグガンバ大阪にちなんで名付けられたという。*1 その経緯は記事ではこのように述べられている。

このガーナの関係者は日本のサッカー事情に詳しく、日本代表に多くのユース出身者を送り出すガ大阪のようなクラブを目指そうと、チーム名を拝借。事後承諾ではあるが、ガ大阪にもあいさつに出向いた。

ここに続く1文があったので「著作権」で検索されたのだと思う。

ガーナは、日本の著作権の範囲外で、本家ガンバは「黙認の姿勢」だった。

短い1文であるがツッコミどころがある。


まず、「ガーナは、日本の著作権の範囲外」とあるが、ベルヌ条約加盟国であれば、日本の著作物でもその国の著作物と同様に保護されるはずだ。*2 ということは、ガーナはベルヌ条約加盟国じゃないのだろうか?
調べて見た。
著作権情報センターのサイトに著作権関係条約締結状況が記載されていた。そこのアフリカを見てみると、ガーナはベルヌ条約加盟国であることが確認できた。

著作権関係条約締結状況 アフリカ
http://www.cric.or.jp/db/z/teike/afr.html

だから、「ガーナは、日本の著作権の範囲外」との記述は誤りと言っていいだろう。


では、ガーナでも日本の著作物が保護されるのであれば、ガーナのサッカーチームに「ガンバ」と名付けるのは著作権侵害になるのだろうか?
それは違うだろう。
そもそも「ガンバ」というサッカーチーム名は著作物ではないからだ。
著作権法での著作物の定義は以下の通り。

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

「ガンバ」というチーム名称を「創作的に表現したもの」というのは難しいだろう。
ガンバ大阪のサイトを見ると、GAMBAはイタリア語の「脚」を意味する言葉だと書かれている。イタリア語の「脚」を意味する言葉をそのまま用いたものが「創作的に表現したもの」であるとは言えないだろう。
また、一般的に本のタイトルや記事のタイトルが著作物として扱われないことからしても、チーム名が著作物として扱われることはあり得ないだろう。


むしろチーム名は「商標」の問題だろう。
特許庁特許電子図書館で調べてみたら、「ガンバ大阪」のロゴ、マークは商標登録されていた。
しかし、ガーナで商標登録を行っていなければ、ガーナでの商標権は生じない。
ガーナの「ガンバ」というチームが日本でビジネス展開でも行えば別だろうが、そうでもしない限り、問題は無いと思う。


著作権についての初歩的な勘違いの目立つ記事だったので、直接著作権とは関係の無い記事ではあるが、取り上げた。

*1:パラグアイには「日系ベルマーレ」というサッカーチームがあるが、湘南ベルマーレとの提携で設立されたチームである。 http://www.sea-global.co.jp/nikkei/

*2:ベルヌ条約加盟国であっても、日本が国家であると認めない国の著作物は日本では保護しないというのが、日本のスタンスですが。 http://d.hatena.ne.jp/copyright/20040623/p1 http://d.hatena.ne.jp/copyright/20071214/p1