神奈川県立川崎図書館の統合先? のライフイノベーション特区中核施設

神奈川県立図書館の閲覧・貸出機能の廃止、川崎図書館の廃館と蔵書の県立図書館への集約という打ち出し方をされた神奈川県立図書館・神奈川県立川崎図書館の集約問題が、県立図書館の閲覧機能の存続と県立川崎図書館のライフイノベーション特区の殿町への移転及び特区に県が設置する産業情報センターとの統合ということで、とりあえずの方向性が出されてから約半年が過ぎたが、その後は県による意見交換会が開催されるなどがあったが、大きな動きは出てこなかった。
今月始まる神奈川県議会において何か出てくるかと注目していたが、9月5日に県提出予定議題が公表された。

平成25年第3回県議会定例会(9月提案分)提出予定議案の概要 - 神奈川県ホームページ
http://www.pref.kanagawa.jp/prs/p693347.html

県が9月補正予算案を発表、総額69億円/神奈川:ローカルニュース : ニュース : カナロコ -- 神奈川新聞社
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1309050030/

神奈川新聞の記事で大きく取り上げられたのが、補正予算案の中に盛り込まれたライフイノベーションセンター(仮称)の整備推進。

県は5日、再生・細胞医療分野の研究開発や事業化を手掛ける全国初の中核施設「ライフイノベーションセンター」(仮称)を、川崎市臨海部に整備する方針を明らかにした。

http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1309060001/

センターには、再生・細胞医療の研究に関係するベンチャー企業や大学、研究機関などを誘致する。臨床機能を持つ医療機関も備え、先端医療の実践に向けたマッチングを図る役割も果たす。組織などの再生医療や、がん免疫治療といった細胞医療の事業化を加速させるとしている。

http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1309060001/

この「ライフイノベーションセンター」は特区の中核施設という位置づけのようだが、特区の中核施設こそ、県立川崎図書館の移転・統合先である。*1
ということで「ライフイノベーションセンター」について、県の提出予定議案の概要を見てみた。

平成25年第3回県議会定例会(9月提案分)提出予定議案の概要(PDFファイル/1.1MB)
http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/621571.pdf

ライフイノベーションセンターについては上記ファイルの8ページに記載されているが、そこからこの施設の概要を抜粋する。

(2)施設規模 延床面積 16,000 ?
(3)施設機能
・研究開発機能(ベンチャー企業向けのレンタルラボ・オフィス等)
・試作開発機能(再生・細胞医療関連の最新機器・デバイス試作開発)
・臨床機能(最新の再生医療技術を実践・提供するクリニック)
・生産機能(細胞プロセシングセンター等における細胞やワクチンの製造)
・人材育成機能(再生・細胞医療機器の取扱いに関するトレーニングコース等)
・産業化支援機能(ビジネスマッチング相談コーナー等)

施設機能に図書館機能は明記されていない。関連するとしたら「産業化支援機能」だろうか?
これだけではよく分からない。議会での質疑の中で明らかになっていくことを期待したい。神奈川県議会議員の皆様には、是非この「ライフイノベーションセンター」県立川崎図書館が移転するのかどうか、移転するのであれば、どのような形で入るのか、その点を質問していただきたい。


心配しているのは、産業化支援機能のビジネスマッチング相談コーナーの片隅にちょっとだけ本が置くというような状況になってしまわないかということだ。
と言うのも、県知事の6月議会での答弁から、県立川崎図書館の一部だけを移転するようなニュアンスを感じるからだ。
それは平成25年神奈川県議会第2回定例会6月12日の自民党しぎた議員の質問に対する答弁だ。

知事
次に、中核的支援施設の整備についてお尋ねがありました。
川崎市の殿町地区は、企業や研究機関の進出が次々と決定しており、また、県主導でスタートしたGCCや、特区の各事業も着実に進展するなど、京浜臨海部特区全体が大きく動き出したと感じています。
こうした中、ライフイノベーションの実現を加速させる上で、県がその役割をしっかりと果たすことが求められています。特に集積が進む殿町地域において、例えば研究者が交流する場や、ベンチャー企業が活躍できる場、国際的な医療関連人材を育てる場、産業関連の情報提供を行う場など、こういった機能を有する県の政策展開の拠点づくりが必要となっています。
そこで、こうした取り組みを具体化させるため、県の主導により、スピード感を持って殿町地区への中核的な支援施設の整備を進めていきたいと考えています。
なお、産業関連の情報提供については、川崎図書館が有する機能のうち、先端技術や特許にかかわる情報提供など、企業活動の支援につながる機能に特化し、この施設へ移転する方向で検討しています。

私は、県立川崎図書館が殿町に移転するのであれば、それは仕方の無いことだと思う。現在の場所が川崎市の土地であり、その地域の再開発の予定があるので、いずれはどこかに移転しなければならないので、その場所が確保されたということはむしろ歓迎すべきことだ。
しかし、ライフイノベーション特区に移転することで、ライフイノベーション特区のための施設、ライフイノベーション特区へのサービスに特化した図書館になってしまうのであれば、それは県民のための施設である県立川崎図書館を廃止するのと同じことになってしまう。
ライフイノベーション特区にあったとしても、県民のための施設であることをやめてはならない。県民に対するサービスをやめてはならない。
これからはそのことを私は強く訴えていきたい。
県議会でどのような答弁がなされるかも引き続き注目していく。

*1:県知事の3月議会での答弁より。 廃止方針撤回の県立川崎図書館、臨海部への移転を検討/神奈川:ローカルニュース : ニュース : カナロコ -- 神奈川新聞社 http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1303120009/