文化審議会著作権分会土肥委員長の委員に対する苦言

1月26日に開催された文化審議会著作権分科会(第35回)の議事録が公開されていた。

文化庁 | 著作権 | 著作権制度に関する情報 | 文化審議会著作権分科会 | 著作権分科会 | 文化審議会著作権分科会(第35回)
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/bunkakai/35/index.html

1月12日に開催された法制問題小委員会の議事録はまだ公開されていないので、それよりあとに開催された著作権分科会の議事録はもっと先になるだろうと思っていたけど、著作権分科会の議事録の方が先に公開された。


この著作権分科会では法制問題小委員会と国際小委員会から平成23年度の審議の経過が報告されているが、その内容については自分はまだちゃんと目を通していないので、それについては今回は述べない。


この議事録にざっと目を通していって、最後に土肥分科会長の挨拶で終わっているのだが、その土肥分科会長の発言がとても興味深い。
少々長くなるが、非常に重要な発言だと思うので以下に引いてみる。

【土肥分科会長】 ありがとうございました。
 今期最後ということでございますので,私からも一言ごあいさつを申し上げさせていただきます。
 本日の審議事項のみならず,それに関連して,各委員からいろいろご意見をちょうだいしておりまして,例えば30条2項問題の話でありますとか,保護期間の問題でありますとか,その課題というものはよく承知しております。こういう問題について,分科会あるいは法制小委等が,これまで議論してこなかったわけではなくて,大変な時間をかけて議論を重ねてきた経緯がございます。
 しかし,なかなか最後のところでうまくまとまらなかったわけなのですが,私のお願いとしては,ここにおいでになる委員の方々は当然,それぞれ属される団体から,意見をこういう場で主張するように,あるいは,よって立つ団体の考え方というものを反映されることでおいでになっているのだろうと思います。ですけれども,皆さん方の長年にわたり涵養された経験なり,ご所見なり,さまざまな高度な知識,経験というところに基づいてもまた,ここにおいでになっていると思っております。
 そういうことを考えますと,ぜひとも,単にそれぞれの団体の意見を強く主張されるというわけではなくて,大所高所に立って,いわゆる著作権法1条が目的としておりますところの文化的な所産の利用を図りつつ,著作権,著作者の権利の保護を図り,もって文化の発展に寄与する。この1条の規定の文言というのはなかなかすばらしいなと思うのですけれども,文化の発展にいかに寄与していくかというところを,ぜひとも考えて発言いただければと思います。
(中略)
 したがいまして,今後,難しい問題が出てまいりまして,さらにいろいろと困難な問題に直面すると思いますけれども,委員におかれましては,ぜひとも著作権法1条の目的を十分頭に置いていただいて,大所高所から,日本の国益を実現するにはどうすればいいかというところでご意見を賜りたいと,このようにお願いいたしまして,私のあいさつにかえさせていただきたいと思います。
 以上をもちまして,今期の文化審議会著作権分科会は終了ということになります。本日はどうもありがとうございました。

http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/bunkakai/35/index.html

自分はその場にいたわけではないが、土肥分科会長が最後にこのような発言をしたということは、文化審議会著作権分科会の場で、各団体の代表という立場で参加している委員が、その団体の主張を述べるだけで、「文化の発展に寄与する」というスタンスでは発言していなかったことが伺える。
文化審議会著作権分科会の委員名簿を見ると、その約2/3が団体を代表して委員に加わっていると思われる。
それだけの委員が、各団体の主張を述べることに終始すれば、著作権分科会は機能しなくなるだろう。

文化庁は、次期の著作権分科会の委員を選ぶ際に、各団体の主張を述べるだけの人は委員から外すべきでは無いだろうか。

著作権分科会土肥分科会長が最後の挨拶で述べたことを、文化庁も、著作権分科会委員も重く受け止めて欲しい。