佐々木譲氏がすばらしい

少し前のものだが、はてブ経由で作家の佐々木譲氏の次のエントリーを見つけた。

佐々木譲のプッシュピン: 図書館と貸本屋で育った
http://blogs.dion.ne.jp/sasakijo/archives/7981906.html

内田樹氏のエントリー「読者と書籍購入者」を受けて書かれたもので、内田氏同様、日本文藝家協会のネット上の書籍検索に対するスタンスについての反対意見を述べているが、その中で次のような箇所がある。

わたし自身は、学校図書館や公立図書館、それに貸本屋で本を借りることで、本好きとなり、本のヘビー購入者となった。もし、あのころ、本を購入する、というかたち以外では、本の世界に接近する回路が閉ざされていたとしたら、わたしは読者には育ち得なかったろう。多くのテキストに容易に接することができた時期がなければ、わたしは長じて読者にも、本の購入者にもならなかった。わたしはたぶん本とは無縁に生き、読書の喜びはもちろん、書棚に好きな作家の作品を集めるという愉悦も知らないままに、老いたことだろう。

三、四十年前、図書館や貸本屋に対して、JASRACのような組織が著作権料取り立てをやっていなくて、つくづくよかったと思う。

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図書館を敵視する作家の発言ばかりが目に入ってくるので、佐々木氏のこの発言を目にすることができて本当にうれしい。
三田誠広氏や馳星周氏や楡周平氏のような人ばかりではない。
佐々木氏と同じような考えを持っている作家も、きっと他にもいるに違いないだろうと思うと、心強い。


過去のエントリーを見てみたら、このようなエントリーもあった。

佐々木譲のプッシュピン: わたしはどこまでオリジナルか
http://blogs.dion.ne.jp/sasakijo/archives/7441699.html

ここでは、明確に著作権保護期間の延長に反対を述べている。

デリケートな問題なので、書くとたぶん同業者から反発も多かろうが、わたしの立場は延長に反対。だいたい創作物は、引用され、解体され、再構成され、解釈し直され、他言語に翻訳され、パロディなりパスティーシュが無限に作られていってなんぼのものだ。作家は、自作がそのように扱われることを嫌がってはならないだろう。

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他に、図書館についてのエントリーもあり、俄然、佐々木氏の本を読んでみたいと思ってきた。
佐々木氏のような作家が他にもたくさんいることを期待したい。


ただ、お願いできるのであれば、日本推理作家協会の中でこのような発言をどんどんしていただきたい。
佐々木氏は日本文藝家協会の会員ではないようだが、日本推理作家協会の会員だ。
日本推理作家協会は、日本文藝家協会の声明に連名していることがよくある。
例えば、書籍・雑誌への貸与権適用を求めた「貸与権連絡協議会」の構成団体にも名を連ねているし、図書館に対して公共貸与権(公貸権)を求めた「図書館の今後についての共同声明」にも名を連ねている。

声明文-出版物にも貸与権の適用を!-
http://www.dobiren.org/taiyoken-seimeibun.htm

図書館の今後についての共同声明
http://www.bungeika.or.jp/200511seimei-toshokan.htm

熱心な文藝家協会に引っ張られて名を連ねているだけなのかもしれないが、自分の所属している団体もその文藝家協会に手を貸していることについても認識していただけると助かる。
是非とも推理作家協会の中で声を上げていただきたい。