応援したくなる出版社

オンライン書店ビーケーワン:ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏 2003〜2008
http://www.bk1.jp/product/03028453

ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏 2003~2008

ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏 2003~2008

歴史・民俗学の専門書を出版している岩田書院の、新刊ニュース「裏だより」の2003年〜2008年4月分までをまとめたのが本書。
「裏だより」は岩田書院のサイト全て掲載されている
2002年までの分は、「ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏」として出版されている。
ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏

ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏

その時にここで取り上げている。


歴史・民俗学の専門書の出版だけでやりくりしていくことがこれほどまでに大変なことなのかと、本書を読んで改めてて驚いた。
著者の岩田氏は、結構ざっくばらんに本音を書いていて、例えば専門書1冊を出版するのにかかる経費を明らかにしていたり、普通ならうかがい知れないことまで書いているが、その数字が生々しい。
岩田書院の数字をどこまで一般化していいのか分からないけど、人文学系の専門書の苦戦の状況は伝わってくる。
ここまでオープンに語られると、問題意識を共有できる。


そして何より、岩田氏は他者に責任を転嫁していないところがすばらしいと思う。


この手の出版内幕モノだと、よく図書館が専門書を買わないのが悪い、とかアマゾンが悪い、とか新古書店が悪い、マンガ喫茶が悪い、しいては読者が悪い、って感じになりがちだけど、本書にはそのような記述は無い。
アマゾンについて取り上げているところもあるけれど、アマゾン憎しで書いているのではなく、アマゾンがある状況下でどうすればいいのかを模索している。

【アマゾンって、こうなんだ? 「在庫切れ」は嘘、の巻】
http://www.iwata-shoin.co.jp/backnews/ura/ura479.htm

【アマゾンって、こうなんだ? なんでこうなるの、の巻】
http://www.iwata-shoin.co.jp/backnews/ura/ura481.htm

【アマゾンって、こうなんだ? 対応策は、の巻】
http://www.iwata-shoin.co.jp/backnews/ura/ura484.htm

【アマゾンって、こうなんだ? ken_taroに負けている、の巻】
http://www.iwata-shoin.co.jp/backnews/ura/ura485.htm

【アマゾンって、こうなんだ? アマゾンにも負けている、の巻】
http://www.iwata-shoin.co.jp/backnews/ura/ura489.htm

この姿勢には共感を覚える。
そして何より、学術文献のコピーの問題から著作権に関わるようになった自分としては、「コピーフリー宣言」が出版社の人から出たことを、すばらしいと思う。

【コピー・フリー宣言(1)】
http://www.iwata-shoin.co.jp/backnews/ura/ura489.htm

【コピー・フリー宣言(2)】
http://www.iwata-shoin.co.jp/backnews/ura/ura0280.htm

このような考えを持っている出版社は応援したくなる。
岩田書院の出版分野は、自分の関心のある分野とはほとんど重なっていないが、文書館・アーカイブ関連だと若干関連があるので、岩田書院の本を買ってみたいと思う。


なお、たまたま昨日次のエントリーを読んだ。

キーパーソンズ・メッセージ「「電子(デジタル)から紙(アナログ)へ」」 日本電子出版協会(JEPA)
http://www.jepa.or.jp/news/keyperson.php

ここで取り上げられているのは、「電車男」に「ケータイ小説」だけど、本書も「電子(デジタル)から紙(アナログ)」という流れで出版されている。
他にも例えば未来社のサイトのコンテンツから出版のためのテキスト実践技法 (執筆篇)出版のためのテキスト実践技法 (編集篇)が出版されたケースもあるので、ここで書かれていることはそれほど新しいことではないかもしれない。
でも私が「裏だより」に共感を覚えたように、出版社が自分の考えをサイトで発信していき、それが本になる、という流れにも可能性はあるかもしれない。