twitterで知ったこの記事。
野村明弘. 著作権「補償金」と学者の不適切な関係.
週刊東洋経済. 第6129号(2008年2月23日増大号), p.32-33, (2008年)
この記事を書いた野村明弘氏は週刊東洋経済の人。
私的録音録画補償金と文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の問題について取り上げた記事なのだが、批判すべきところを間違えた、とても残念な記事。
この記事では、私的録音録画小委員会の委員の大学教授3名(国立大学教授2名、私立大学教授1名)が、私的録音録画補償金から資金を提供されている(社)著作権情報センター(CRIC)と金銭的関係があることを批判している。
その大学教授3名が私的録音録画補償金を増大させようとしているのなら、この記事の批判は妥当なものなのだが、実際のところはそうではない。
その3名の大学教授は誰か。
私的録音録画小委員会の委員名簿みると、大学教授は国立大学教授が4名、私立大学教授が3名いる。
東洋経済の記事によると
学者3人のうち2人は、このCRIC内にある著作権研究所の運営委員も勤める。(中略)また、残りの1人もCRICの一部受託事業(06年度)の委員として給料手当を受け取っていた。
とある。
CRICのサイトに著作権研究所の運営委員の名前があった。(06年度の一部受託事業の委員についての記載は見つけられなかった)
私的録音録画小委員会委員で、著作権研究所の運営委員を兼ねているのは、中山信弘氏と松田政行氏。
中山氏と松田氏が私的録音録画補償金の拡大に積極的であったのだろうか。
記事では
CRICと関係が深い2人は中立的発言が多く、基金との関係で偏った発言があったとまでは言えない。
とある。
わたしも、全部とは言わないが、議事録には大体目を通しているが、この2人は記事の通り中立的発言が多かった様に思う。
記事では上記記述の後に
著作権保護技術の革新を受けた補償金制度の見直しの議論野庭に、その補償金から間接的とはいえ金銭を得る学者が入っているのは、不適当と言わざるをえない。
とあるが、一般論としてはその通りだと思う。しかし、特に主査を務められた中山先生が非常に難しい立場で委員会の舵取りをしてきたことを考えれば、不適当な批判と言わざるをえない。
私的録音録画補償金に対して反対の立場を取る人が多い著作権BLOGでも、中山先生に対する批判目にしたことは、私は無い。それは、中山先生が著作権について、権利と利用のバランスを考えていることを皆知っているからだと思う。
この記事を書いた人には、是非、中山先生の最終講義についての記事や、中山先生の著書「著作権法」を読んでいただきたかった。
私的録音録画補償金と私的録音録画小委員会には問題がある。そのことは確かだし、そこに着目したことについては「週刊東洋経済」を評価していいかもしれない。しかし、その批判の矛先が全く見当違いのところに行ってしまったのが、非常に残念。批判すべきは、事務局としての文化庁のあり方とか、委員の構成とか、他にたくさんある。そこをちゃんと批判して欲しかった。
とても残念な記事だ。
追記
この記事がWebに掲載されました。
週刊東洋経済TKプラス|The Headline|投資・経済・ビジネスの東洋経済オンライン
著作権「補償金」と学者の不適切な関係(1)
http://www.toyokeizai.net/online/tk/headline/detail.php?kiji_no=337