演奏権と30条

駒沢公園行政書士事務所日記:カイロ(整体)治療院でのCD音源のBGM使用について
http://ootsuka.livedoor.biz/archives/50043878.html

カイロプラティック施設でのBGM使用について、JASRACに支払う必要があるかどうかについて、解説されています。

基本的には妥当なものだと思いますが、1ヶ所気になるところがありました。

そこでさらに、顧客がお気に入りのCDを持ってきてそれを院内の再生機器で再生する場合を検討してもらいました。

この場合、私的使用目的(著作権法30条)とはいえない、つまり権利処理が必要というのが結論でした。

私には何でここに30条が出てくるのか理解できません。
30条というのは複製権の制限規定です。
しかしCDの再生は「複製」ではありません。著作権法上では「演奏」として扱われます。
CD再生は「演奏権」に関わる問題ですので、「複製権」とは関係がありません。
この場合は営利を目的としない演奏等に関わる権利制限規定の38条に該当するか否かが問題であって、30条は関係ないと思います。

むしろ38条をつかって、38条における「営利」と「料金」についての政府解釈を持ち出せば対抗できるのではないでしょうか。

民主党の川内議員らが昨年提出した「今国会提出の著作権法の一部を改正する法律案に於ける暫定措置廃止後の法律の運用に関する質問主意書」にたいする政府答弁において、料金については

書籍又は雑誌の貸与に対する対価という性格を有するもので はなく、これらの施設の一般的な運営費や維持費に充てるための利用料であると認められる場合には、著作権法(昭和四十五年法律第四十八号 。以下「法」という。)第三十八条第四項に規定する「料金」に該当しないものと解される。

とし、「営利」については

業としてのその貸与行為自体から直接的に利益を得る場合又はその貸与行為が間接的に何らかの形で貸与を行なう者 の利益に具体的に寄与するものと認められる場合というものと解される 。

としている。
この質問趣意書は38条の4項についてのもので、演奏権の制限は38条の1項になる。しかし、政府の「料金」の解釈は、38条の1項と4項で違いはないと、同じく民主党の川内議員らが昨年提出した「著作権法第三十八条第一項及び第四項の解釈等に関する質問主意書」に対する答弁書で述べています。

カイロプラティックの料金は、CDの演奏の対価という性格は有していないと思いますし、カイロプラティックはCDの演奏自体から直接的利益を得ているわけではないと思います。
ただし、CDの演奏が、間接的にカイロプラティックの利益に具体的に寄与しているかどうかは、微妙なところだと思いますが。