西船橋事件と公貸権

火塚たつやさん西船橋事件の判決について論じられています。

著作権コラム第十一回
船橋図書館蔵書遺棄事件判決を読む
http://tatuya.niu.ne.jp/copyright/column/11.html

私の感じた違和感が何に根ざすものなのか、少しわかったような気がします。

ところで、一つびっくりしたのが原告の東京高裁での主張。
火塚さんは次のようにまとめている。

著作権のひとつである公貸権を主張、蔵書を根拠無く除籍することは同権利を侵害するものであると、主張している。

蔵書の廃棄が公貸権侵害とは驚いた。
もちろん、日本では公貸権という権利はどの法律においても規定されていない。
つまり、日本では公貸権という権利はないのであって、火塚さんも

公貸権については、そもそも現行著作権法が(諸外国が公貸権を認めている事実は兎も角)公貸権条項を規定していないことを理由に、一蹴している。

とまとめている。
そもそも公貸権とは、導入されている国によってだいぶ制度が異なるのだが、図書館での貸出についての補償金を受け取る権利である。
日本においては、そもそも公貸権という権利自体が存在しないので、補償金を受け取るような仕組みも存在しないので、そもそも論としてこの主張はおかしいのだが。
しかし、公貸権が導入している国において、図書館の蔵書が根拠なく廃棄されたら、それは公貸権の侵害になるのだろうか?
「公貸権」という言葉だけが一人歩きしているような気がします。