専門図書館協議会がすべき事は何だったのか

専門図書館協議会の機関誌「専門図書館」の最新号(No.205)に次の文献が掲載されている。

前園主計. 著作権法附則4条の二の廃止と専門図書館.
専門図書館. No.205, 17-19, (2004)

著者の前園氏は前専門図書館協議会著作権委員会委員長である。
一言で言えば、 著作権法附則4条の二が廃止されても、専門図書館には何の影響も無いので安心してください、という内容である。
もし、前園氏の言うとおりであるなら、私も安心です。

でも、この文献を読んでも私は安心できませんでした。
その理由は、それがあくまで前園氏の解釈に過ぎないからです。
文化庁は前園氏の解釈に同意しているのでしょうか。
出版関係団体は前園氏の解釈に同意しているのでしょうか。
上記文献からは、前園氏が文化庁や出版関係団体に確認を取っていることは読み取れません。
それでは前園氏がいくら大丈夫ですと言っても、何の保証にもならないと思います。

今回の国会審議の中で、大臣答弁や付帯決議であっても法的な保証にはならないということが問題になっているのですから、前園氏がいくら大丈夫といっても私は安心できません。

専門図書館協議会は、今回の著作権法改正にあたって何のアクションも取っていないと聞いています。
専門図書館協議会がなすべきことは、会員の不安を解消することです。
でもそれは、前園氏個人の解釈に過ぎない文献を機関誌に載せることではありません。

幸いにも、民主党の川内議員と近藤議員が「今国会提出の著作権法の一部を改正する法律案に於ける暫定措置廃止後の法律の運用に関する質問主意書」を提出したことにより、その答弁書から、書籍の貸与から直接利益を得ていない場合は営利目的の貸与とは見なされないこと、有料であっても貸与への対価という性質を有さない場合(施設の一般的な運営費や維持費に充てるための利用料と見なされる場合)には有料の貸与とは見なされないこと、等が確認できました。
この答弁書があるので、仮に権利者側が専門図書館での貸与を禁止しようとしても、対抗できるのです。

しかしこれは川内議員・近藤議員が質問趣意書を提出したからこそ確認できたわけです。
もしもこの質問趣意書が提出されなければ、権利者側が専門図書館での貸与を禁止しようとした場合に対抗できなかったのではないでしょうか。

専門図書館協議会がやるべきだったことを、今回は川内議員・近藤議員がやってくれました。でも、いつもこうなるとは限りません。

消尽しない譲渡権、展示権の拡大、公貸権、出版社の権利と、これからも権利強化の動きは続くと思います。どれも専門図書館への影響が及びそうなことばかりです。
文化庁や権利者団体に対して、専門図書館の立場から声を上げていくこと、それが専門図書館協議会がなすべきことだと私は思います。