パブリックコメント

謎工さんのBLOG羊堂本舗でも取り上げられていますが、非常に重大なことなので、二番煎じ、三番煎じになりますが、ここでも取り上げます。

文化庁が昨年12月に行った、「文化審議会著作権分科会報告書(案)」に関する意見募集に際して、文化庁が出版界に対し、書籍・雑誌への貸与権の適用への賛成意見を提出するよう働きかけていたのです。

ソースは、雑誌「プレジデント」2004.4.12号(第42巻第7号)に掲載された、佐野眞一氏の「だれが「本」を殺すのか 検死篇 上」(p.190-195)。
該当部分はp.193〜p.194にかけての以下の部分。

 このまことに子細かつ堂々たる(引用者注:ARTS広報担当理事の赤田氏による)反論を読みながら、「貸与権」問題が本格的に騒がれはじめた昨年暮、ある大手版元の編集者がうんざりした顔でみせてくれたこんなペーパーを思い出した。
〈緊急のお願い 編集局長各位
 いま、貸与権がヤマ場となってきました。文化庁では国民の声を幅広く聞くということで(12/10〜12/24)まで募集することになりました。反対の陣営(中古ゲーム業者やリサイクル業者)が1000人以上の反対意見を動員する予定とのことです。
 つきましては、賛成の声を集めて欲しい、という文化庁の要請です。
 ぜひ、別紙を参照のうえ、局長、次長、部長の皆様は全員、コメントの提出をお願いします。今回、獲得ができなければ、今後、ますます出版界は体力が衰えてしまいます。
 どうか、ご協力のほど、よろしくお願いします。〉
 別紙には、貸与権連絡協議会の声明文などが付けられ、ご丁寧にもいくつかの文案例が列記され、最後には「ご本人はもちろん、友人、ご家族にも声をかけて頂きたいと思います。」というコメントまでつけ加えられている。
 出版人たちは口を開けば言論の自由などと言い立てているが、こと自分たちの既得権益の話になると、たちまち二枚舌になり、完全に言論封殺の集団になってしまう。

佐野氏が指摘するように、出版界のダブルスタンダードは大いに問題であろう。私としては、「言論の自由」を出版界にはもっともっと主張してもらいたいのだが、一方でこのようなことをやっていると、それを理由に「言論の自由」が脅かされる危険が出てきてしまうし、一般の支持を得られなくなってしまうだろう。その点は充分に自戒してもらいたい。
しかし、問題はやはり文化庁

すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない

日本国憲法に書かれているが、文化庁が行ったことは、この日本国憲法に反する行為だ。
奇しくも、前文化庁長官の岡本薫氏が、3月23日付けの朝日新聞で次のように語っている。

多くの業界が、われわれが延びるのが日本のためだというが、それは独善。どこにより強い権利を認めるかは憲法のルールに従って国民の意思で決めること

この言葉は、新聞紙上で読者に対して訴えるまえに、文化庁著作権課長時代に自分の部下に対して徹底しておくべきことではなかったのか。
岡本氏は続けて言う。

権利の現状が不満なら、著作権課の役人ではなく、国会を通じて法律を変えるべきだし、その仕組みにも不満なら、改憲か革命を目指せばいい

文化庁憲法のルールを犯している現状で、文化庁への反対意見を出して国会を通じて法律を変えることは、まず不可能だろう。
書籍・雑誌への貸与権の適用に反対の立場の私には、もはや革命を目指すしか、道は残されていないのだろうか。