しつこいようだが、貸与権は報酬請求権ではない

日本推理作家協会巻頭言理事長の言葉から。

一月の半ば、文化庁文化審議会著作権分科会が、書籍や雑誌にも<貸与権>を付与するのが至当だ、とする報告書をまとめた。その結果、貸本業などのレンタルショップは、出版物についてもビデオやCDと同様、著作権料を支払う義務が生じることになった。

書籍・雑誌への貸与権の適用を主張している人たちは、自分たちが要求している権利がどのようなものなのかを知らないのだからあきれてしまう。
貸与権とは報酬請求権ではなく、権利者が他者の貸与を禁止できる権利である。
権利者は貸与の許諾を求められた場合、無条件で許諾することだって可能だし、どんな条件でも認めない、ということだってできるという、非常に強大な権利なのだ。
貸与権が適用された場合、レンタル事業者に著作権料を支払う義務が生じるのではなく、権利者の許諾を得る必要が出てくるということだ。著作権料を支払うか否かは、権利者がレンタル事業者に対しそれを求めるか否かによるのである。逆に言えば、レンタル事業者が著作権料を払うといったって、権利者は、それでも貸与は認めない、ということだって可能なのだ。
権利を求めるのは良いが、自分たちが求めている権利はどのような権利なのかは知っておいてしかるべきであろう。