文化は誰のもの

昨年の7月から朝日新聞の文化面で不定期連載されていた「文化は誰のもの」。
結構バランスのとれた記述が多く、楽しみに読んでいたが、今日と明日で最後だそうだ。
今日掲載されたのは、岡本薫氏と山田奨治氏による著作権制度のあり方について。

文化は誰のもの 著作権の未来は 上
制度のひずみに堂向き合うか…専門家2氏に聞く
岡本薫さん 対立は宿命、ルールの議論を
山田奨治さん 課税も一手、流動性より高く
朝日新聞. 2004年3月23日(火)32面(文化総合)

山田氏の意見は著書の「日本文化の模倣と創造」を読んでいたので、それほど新鮮味は感じなかったが、基本的にはうなずける。

一方の岡本氏。
岩波新書の「著作権の考え方」(ISBN:4004308690)を読んで、それまで主張と少し変わったような気がしたというか、岡本色が薄れたような気がしたが、今回の記事もその延長上にあった。文化庁著作権課長を退任してから、考えが変わったのだろうか?
記事中にも次のようにある。

 岡本さんは以前は「著作権は人権」と主張、権利者側に肩入れしていると見る向きもあった。

著作権課長時代はまさにそうで、「著作権は人権であり、著作権の権利制限は人権の剥奪だ」と主張していた。
その岡本氏が、この記事の中では

最近の状況は、権利者に振り子が振れすぎているように思う。人権も人工的に作ったルール。

と語っているのだから、非常に違和感を感じる。
著作権課長時代の岡本氏の影響を強く受け、「著作権基本的人権である」と主張している三田誠広氏などは、はしごをはずされたように感じているのではないだろうか?
しかし、本当に岡本氏の考えが変わったのかどうかは、まだわからない。
著作権の考え方」よりも岡本色が全面的に出ている「インターネット時代の著作権 もうひとつの人権」の2004年版(ISBN:4793701302)が出版されているので、それを読んでから判断したい。