フェアユースの検討は法制問題小委員会に

NIKKEI NETの報道によると、フェアユースの検討は法制問題小委員会で行われるらしい。

早ければ2月末から文化審議会の法制問題小委員会で議論を始め、1年間かけて結論を出す予定。

著作権者の了承不要、「二次利用」拡大を検討 文化庁 NIKKEI NET(日経ネット):主要ニュース−各分野の重要ニュースを掲載

昨年末に法制問題小委員会を傍聴したが、委員の松田氏と座長の中山氏の間で、フェアユースとネット権について激しいやりとりがなされていた。*1
正直1年で結論が出せるのか、心配である。
著作権保護期間延長や私的録音録画補償金の議論のように、まとまらずに2年も3年も経ってしまう可能性もあると思う。


私はフェアユースの導入には賛成であるが、早急な結論を出すことは特に望んではいない。
導入するのであれば、きちんとしたフェアユースを導入して欲しいと思っている。
導入を急ぐために、think Cの共同提言にあるような、図書館・教育・障害者福祉の分野における公的保障の導入を前提としたものが導入されてしまうのであれば、数年かけてもいいから、しっかりと検討して欲しい。*2
フェアユースの本来の趣旨にかなったものが導入されるのであれば、5年ぐらいかかってもいいと思っている。
とにかく、法制問題小委員会での検討をしっかりと見ていきたい。

検索エンジンの権利制限はフェアユースの前に導入されるはず

なお、NIKKEI NETの記事に

(引用者注:フェアユース)規定ができると、インターネットの検索サービスなどが展開しやすくなる。

著作権者の了承不要、「二次利用」拡大を検討 文化庁 NIKKEI NET(日経ネット):主要ニュース−各分野の重要ニュースを掲載

とあるが、検索エンジン関連の権利制限は、次の著作権法改正で盛り込まれるはずである。
1月16日に開催された法制問題小委員会において、「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会平成19・20年度・報告書(案)」が検討されており、その案が文化庁のサイトに掲載されている。

文化庁 | 著作権 | 著作権制度に関する情報 | 文化審議会著作権分科会 | 法制問題小委員会 | (平成20年第11回)議事録
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h20_11/gijiroku.html

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会平成19・20年度・報告書(案)(PDF形式(1.13MB))
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h20_11/pdf/shiryo_1.pdf

その報告書案の62ページに

現行の著作権法下では、どのような解釈論にたつとしても、検索エンジンサービスの一連の行為に関する法的リスクを必ずしも払拭することはできないことを踏まえれば、著作者の権利との調和と安定的な制度運用に慎重に配慮しつつ、本報告書で論じられた方向を前提として、権利制限を講ずることが適切であると結論づけられる。
(強調:引用者)

と、検索エンジンサービスについては権利制限を行うべきという結論が書かれている。
この報告書(案)が原案通りに承認され、文化審議会著作権分科会の報告書としてまとめられれば、文化庁はそれに基づき、法改正案を国会に提出するだろう。そして、それが議決されれば、検索エンジンに関わることはフェアユース導入の結論を待つ必要は無くなるはすだ。
フェアユースをネットビジネスの為に導入すべき、という主張は、フェアユースを矮小化させてしまうと私は思っている。
検索エンジンについては、法改正の目処が立っているはずなのだから、それに限定した議論ではなく、もっと本質的なところでの検討を期待したい。

*1:メインはフェアユースではなくネット権の方だったが。

*2:ビジネス利用を推進させるために公共性の利用を生け贄に差し出すようなフェアユース紛いのものが導入されるようになるのであれば、私はそれには断固反対する。