文部科学大臣・副大臣が記者会見でTPPについて言及していた

TPPが日本の著作権法に影響を及ぼしそうだということは、福井健策先生達の活動で一般にも知られるようになってきた。

TPPで日本の著作権は米国化するのか〜保護期間延長、非親告罪化、法定損害賠償 -INTERNET Watch
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/fukui/20111031_487650.html

TPPは農業だけじゃない、著作権分野でも議論を――福井弁護士らが呼びかけ -INTERNET Watch
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20111109_489343.html

TPPで著作権侵害非親告罪化されたら〜同人誌・コスプレを守る方法とは -INTERNET Watch
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20111115_491036.html

一方で所轄官庁である文化庁文部科学省はどのように認識しているのかが気になったので、ちょっと調べてみた。
文部科学省のサイトの大臣記者会見のページを見ていったら、11月10日の記者会見で森副大臣が、11月11日の記者会見で中川大臣が、それぞれ記者からの質問に答える形でそれぞれTPPについて言及していた。
その箇所を抜粋する。

まずは森副大臣の発言。

記者)
 副大臣、お話は変わるんですけれども、環太平洋経済連携協定、TPPの交渉への参加をめぐる党の提言が出まして、慎重に判断進めていくと。これに対して、首相は今日にも交渉参加の姿勢を表明する見通しというふうに伝えられていますが、この一連の経過の中で、かなり説明不足、国民に対する説明不足であるというような指摘もあります。この一連の問題に対してのお考えと、それから、教育分野を含め、文科省の所管分野への影響についてはどのようにお考えでしょうか。

副大臣
 説明不足という御指摘でございますけれども、あらゆる可能性を考えてきちんとやはりどんなメリット、デメリットがあるのか検証しなければいけないのではないかというふうに私は思っています。
 残念ながら、私どもの方でそのことについて議論をしたわけではありません。知的財産権における著作権あるいは越境サービスにおける学校教育等、文科省に関連する分野がございます。これはどういうことに気をつけていかなければいけないのかということについて、もう少し整理が必要なのではないかなというふうにと思います。
 TPPの問題は、何か農業とほかの輸出産業というか、工業との対立のような感じにあおられている部分もあるんですけれども、私はTPPの問題というのはもっと広く大きな問題だというふうに思っていますので、やはりどんな形になるにせよ、慎重に、そして戦略的にきちんとやっていかなきゃいけない問題だというふうに思います。

森ゆうこ文部科学副大臣記者会見録(平成23年11月10日):文部科学省

そして、中川大臣の発言。

記者)
 首相がTPPの関係で、昨日TPP交渉に参加するかどうかの判断を、1日遅らせて今日表明するということになりました。このことの受け止めと、それから今後、文科省の所管分野に対してどんな影響があるかということについても協議・検討を省内でどのような形で行っていくかについてお考えをお願いします。

大臣)
 党内でも非常に活発な議論があったということでありますので、総理も慎重にその辺を考えて1日ずらしたということと、今日、今、正に今ですが、予算委員会の場で改めて、これは野党も含めた形での議論というのをしていくということ。そのことによって、さらに総理としては国民の皆さんにも理解をしていただくという機会をつくっていくということだったというふうに思っています。それはそれで慎重にといいますか、大切なことであったというふうに思います。
 我が省に関してなんですが、今までに分かっている範囲での項目付けでいくと知的財産権の分野における特に著作権ということ、それからもう一つは越境サービス部分における社会サービスとしての教育というところ、この2点ぐらいが文部科学省としては対象になってくるのかなというふうに思っています。ただ、それが具体的にどういうところで議論になるかというのは、はっきりしていません。はっきりしていませんということは、項目はこういうふうに置かれているんですけれども、具体的な問題について、まだ提起がなされてきていないということだと思います。なもんですから、あらゆる形を想定して、日本としてどういうふうにそれに対応していくかということについては議論は始めております。

記者)
 大臣御自身は、このTPP交渉への参加についての賛否については、どのようにお考えでしょうか。

大臣)
 私たちの、文部科学省の分野を含めても個々に検討していくとプラスになっていく面、あるいはマイナスになっていく面、それぞれあります。それをどう理解するかということなんですが、私は一つはこうした交渉の中で出てくる問題に対して、逆に国内の制度改革に結びつけていく、そういうきっかけにもなっていくんじゃないかというふうに思うんです。TPPの議論だけじゃなくて、やはり国際化という中で私たちの分野それぞれ考えていくと、内にこもるんじゃなくて世界に展開をしていくという形になっていくと、やはり国際的な基準、あるいはスタンダードといいますかね、そんなものを作っていく、あるいはそういう、逆に言えば日本の持っているスタンダードを世界に対してアピールもしていくという機会にもなっていくと思うので、TPPが今課題にはなっていますけれども、FTAEPAの流れというのは、これはどんどん進んでいくわけですから、いつやるかと、今やるのか、それともその先の流れにするのかというその違いだけであって、今やるということであるとすれば、それが一番いいんだろうというふうに思っています。そういうふうに果敢に挑戦をしていくということが大事なんじゃないかなという意味でTPPには私は賛成なんですけれども。これは私たちの分野だけの話じゃなくて、それぞれの日本の中の分野に共通することだと思うんですけれども。

中川正春文部科学大臣記者会見録(平成23年11月11日):文部科学省

中川大臣の発言のなかで気になるのは、「逆に国内の制度改革に結びつけていく」きっかけになると述べている点と、TPP自体には「賛成」だと述べているところ。
特に制度改革について、どのように進めていくのか、それを提示していないので、正直不安である。
これからも、中川大臣の発言には注意していかないと。