川内議員の質問趣意書

今年の2月に次の2つのエントリを書いた。

入館料を取る文芸館での貸出と貸与権 - Copy & Copyright Diary
http://d.hatena.ne.jp/copyright/20090226/p1

質問趣意書への政府答弁ではダメだ - Copy & Copyright Diary
http://d.hatena.ne.jp/copyright/20090228/p1

1件目のエントリは、入館料を徴収している文芸館での本の貸し出しが貸与権に触れるという報道に対して、質問趣意書に対する政府の見解に基づけば、その文芸館での貸出は貸与権の権利制限の範囲内にある、ということを書いたものだ。
そして、2件目のエントリは、質問趣意書に対する政府答弁が、著作権法の体系書・解説書では全く試みられていないことを書いた。
私は書籍・雑誌への貸与権適用について、一貫して反対の立場から発言しており、上記の2つのエントリもそのスタンスからのものである。


ある人から教えていただいたのだが、その元の貸与権に関する質問趣意書を出した川内議員が、この件について改めて質問趣意書を出している。

図書館法第二十八条及び著作権法第三十八条第四項の規定に関する質問主意書
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a171285.htm

川内議員がこの質問趣意書を出したことについて、心の底から感謝するとともに、川内議員のその真摯な活動に対して、最大限の感謝の意を表したい。
質問趣意書を出しっぱなしで終わらせるのではなく、その後の同項についてもフォローし、再度質問趣意書を提出されたその活動には、本当に頭の下がる思いだ。
本当にありがたいと思うし、感謝している。



しかし、この問題は政府の見解を問うだけで解決できるとは思っていない。
川内議員の姿勢には、本当に感謝している。
しかし、件の文芸館の件では、政府答弁・政府見解を引き出すだけでは解決できないと思っている。
著作権法の研究者が、その政府答弁・政府見解をきちんと踏まえない限り、いくら政府の見解を引き出しても、それでは解決できないと思っている。それについて書いたのが2件目のエントリだ。
いくら政府の見解が出ても、それが著作権法の研究者が参照しなければ、著作権法の解釈には影響を及ぼさないのだ。
そのことが分かったのがこの文芸館の事例だ。
いくら議員が政府見解を引き出したとしても、それが著作権法の研究者が無視すれば、その見解は無かったものとして、法解釈がなされてしまっている。
これは政府の問題ではなく、著作権法に携わっている法学者・研究者の問題なのだ。


川内議員の活動には本当に感謝をしているし、頭の下がる思いだ。
しかし、その川内議員が引き出した政府答弁を、著作権法に携わる法学者・研究者が無にしてしまっている。
その状況が悔しくてならない。


再度述べさせてもらうが、川内議員のこの真摯な取り組みには心の底から感謝をしている。