MiAUのパブコメ案のブラックジョーク

追記(2007年11月10日18:55)

スラッシュドットから来られた方は、下記エントリも合わせてお読みください。

私はMIAUの活動を支持しています。 - Copy & Copyright Diary
http://d.hatena.ne.jp/copyright/20071110/p1

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MiAUのサイトに掲載されているパブリックコメント案。

MIAU : パブリックコメント
http://miau.jp/1193380201.phtml

ざっと目を通していたところ、あるところでニヤリとしてしまった。
それは次の箇所

○むしろ虚偽の著作権表示を違法化すべき

また、合法アップロードを明確化させることで、今回の違法化に対する上記の懸念を払い去ることができるとは思えません。権利者や権利団体の中には、たとえば著作権が切れているはずの鳥獣戯画のような古典作品について、保有してもいない著作権を主張することで、私たち一般ネットユーザーの自由な利用を萎縮させようとする人たちも存在しています。

合法ダウンロードマークを明示するよりもむしろ、著作権を主張するコンテンツの提供者に対して、合法な利用行為に関する必要十分な提示を義務付け、合法的であるはずの利用が禁止されているかのような権利表示を違法化するという法改正こそ必要ではないかと考えます(実務的な観点から、改正法運用当初は、そのような「違法行為」について、刑事罰までは定めなくても良いと考えます)。

権利の及ばない行為に対してまで権利を主張しているサイトはたくさんある。
例えば、日本経済新聞社は「日経平均株価」に著作権があると主張しています。

NIKKEI NET(日経ネット):著作権について
http://www.nikkei.co.jp/help/copy.html

日経平均株価著作権

日経平均株価には著作権があります
日本経済新聞社日経平均株価(日経平均、日経225)、日経300など株価指数著作権保有しています。

株価に著作権があるというのは、何処を同解釈しても、無理があるでしょう。
それが、独自のノウハウで算出したものであっても。
思想・感情を表現したものにはあたらないと思います。


かつて、文化審議会の委員が、法律雑誌のインタビューでとんでもない意見を言っていたこともあります。

ビジネス法務 - Copy & Copyright Diary
http://d.hatena.ne.jp/copyright/20040422/p1


また、文化庁のサイトも著作権表示でおかしいところがあります。

文化庁 | 文化庁ホームページについて
http://www.bunka.go.jp/about_hp/index.html

2.著作権
文化庁ホームページ」に掲載されている個々の情報は著作権の対象となっています。また、「文化庁ホームページ」全体も編集著作物として著作権の対象となっており、ともに日本国著作権法及び国際条約により保護されています。

表現的には微妙ですが、文化庁のサイトには著作物でないもの(=著作権の対象とならないもの)具体的には法律なども掲載されています。そのことが明記されていません。

さらに、文化遺産オンラインという文化庁がNiiと一緒になって運営しているサイトがありますが、そこでも同様な表記があります。

文化遺産オンライン
http://bunka.nii.ac.jp/Index.do

著作権及びリンクについて
http://bunka.nii.ac.jp/jp/about/copyright.html

文化遺産オンラインには、著作権の切れた著作物が大量に掲載されています。にもかかわらず、それらに著作権が生じているかのように誤解しかねない表現をしているのは、かなり問題だと私は思います。

なので、MiAUパブコメ案を読んだときに、思わずニヤリとしました。
とても鋭いブラックジョークとして。


虚偽の著作権表示を違法化するというのはブラックジョークとしては、非常に高度なものだと思いますが、ブラックジョークはあくまでもブラックジョークです。
現実的にそのような法改正がなされるとしたら、それはそれでとても問題だと思います。
私は2つの点から「虚偽の著作権表示の違法化」には反対です。

1つは「無知」が罰されることになるからです。
著作権について、誤解、勘違いしている人はたくさんいます。
私も一部誤解しているところがあるかもしれません。
自分の「無知」による誤解や勘違いに基づいて著作権表示をすることもあるでしょう。
それが「違法」とされてしまうことは、「無知」であることが「違法」だということになります。
私はそれは行き過ぎだと思います。

もう1つは、表現の自由言論の自由に反するからです。
私は、現行の著作権法は権利が強すぎるのでもっと弱い権利にしたり、権利制限をもっとすべきだと考えていて、そのような主張をしています。
しかし、逆の立場の人もいます。現行の著作権をもっともっと協力に保護すべきだという考える人もいます。
その人達が、自分の考えに基づいて、あえて、過剰な権利表示をすることもあると思います。
わたしは、自分個人の意見としてはそれには反対ですが、自分の主張をそのような形で表明すること自体はできるようにすべきだと思います。
それが言論の自由表現の自由だと思います。
もし、それを違法とするのであれば、逆に著作権をもっと制限すべきだという私の主張が表明できなくなることも容認しなくてはならなくなります。
言論の自由表現の自由と、著作権とどちらが優先されるかと言えば、私は前者だと思います。
だからこそ、著作権法32条で引用には著作権は及ばないとされているのです。
言論の自由表現の自由よりも著作権が優先されることは、あってはならないと思います。


なので、私は「虚偽の著作権表示の違法化」には反対です。
MiAUパブコメ案のその箇所は、やはり「ブラックジョーク」として読むべきだと思います。

補足

ブラックジョークとしては、すごくいいセンスだとおもいますが、ブラックジョークと理解できない人もいるかと思って、蛇足的なエントリーとして書きました。
私はMiAUの活動を支持しています。