「工学化」後の書物と著作権

仲俣暁生id:solar). 「工学化」後の書物と著作権.
(リレー連載 著作権の変容をめぐって01)
InterCommunication. No.50, p.156-160, (2004)

先の国会で可決された、書籍・雑誌への貸与権の適用を中心に、書籍の「工学化」と著作権の拡大の流れについて、非常に深い論考をされている。
私の問題意識と重なる部分が多いので、とても共感を覚えた。
「本を読む」という行為自体をコントロールしたいという欲望を持つ権利者側のスタンスを批判的に述べている部分などは、うなずきながら読んだ。

 つまり、蔵書の価値がある本、何度も読み返すべき内容のある本など現実にはほとんど存在せず、読み捨ての本が今や大半なのだ、と著作者自らが開きなおったうえで、だからこそ、本の「所有」に対してではなく、本に載っている「情報へのアクセス」に対する権利(つまり禁止権)を著作者のものとして認めろ、と読者に迫っているのだ。このような居丈高な態度には唖然とさせらるほかはない。

といった指摘は、痛快である。

InterCommunicationは、この論考を読むためだけに買ったけど、1,400円は高くなかった。
それだけの価値のある文章だと思う。

権利者側の主張に対して、何か違和感を感じたり、どこかおかしいのでは、と思っている人は、是非とも読んで欲しい。
書籍と著作権について考えていくうえで、必読の論考だと思う。