貸本・レンタルコミックだけなのか

文化審議会の報告についての報道、どれも「貸本」「レンタルコミック」となっているが、果たしてそれだけなのだろうか?
著作権法附則第四条の二において、「貸与権」は書籍・雑誌には適用されないことになっているが、この附則が廃止されれば、書籍・雑誌にも「貸与権」が適用されることになる。そうなると、著作権法第三十八条の四に定められている「営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受け取らない場合」を除いたすべての「貸与」は、著作権者に無断で行うことはできなくなる。
つまり、「貸本」や「レンタルコミック」のような「有料・営利」の「貸与」だけでなく、「有料・非営利」「無料・営利」の「貸与」も無許諾では行えなくなってしまうのである。
「有料・非営利」のケースとしては、例えば会員制の専門図書館・文庫などが考えられるし、読書サークルなどで会費を出し合って本を共同購入し、会員内で回し読みする行為だって、引っかかってくるかもしれない。
「無料・営利」のケースとしては、鉄道会社が乗客向けに駅で無料で本を貸し出している例があるし、イトーヨーカ堂は「子ども図書館」を設置し、本を貸し出している。これらの活動も著作権者の許諾を得なければ続けることができなくなるかもしれないのである。更に、企業内専門図書館が社員に本を貸すことが、行えなくなる可能性だってある。
このように書籍・雑誌に「貸与権」を適用した場合、社会に非常に大きな影響を与える恐れがある。
しかしながら、文化審議会が意見募集をした報告書(案)を読むかぎり、これらの「有料・非営利」「無料・営利」の「貸与」について、どのような影響が出てくるかを検討した形跡は見られない。
単に「レンタルコミック」についてだけ検討しただけである。(「貸本」についてすら検討を行っていない)
そのような不十分な検討で、書籍・雑誌への「貸与権」の適用を提言してしまうことは、あまりにも稚拙であり、「貸与権」を矮小化しすぎている。