ICタグによる実空間でのDRM

仲俣暁生さん(id:solar)の海難記を読んで驚いた。

2008-02-22 - 【海難記】 Wrecked on the Sea
続・工学的不安に抗して〜taspo導入は何を意味するか
http://d.hatena.ne.jp/solar/20080222#p1

私はタバコを吸わないので全く知らなかったが、自動販売機でタバコを買うのに成人であることを証明するための専用のICカードが必要になるらしい。そのICカードには、顔写真まで記載されるとのこと。
タバコを吸うのにそこまで求めるのは大げさじゃないかと思うのだが、喫煙家の方々はどのようにおもわれているのだろう。
私はタバコは吸わないし、マナーの悪い喫煙者に腹が立つこともある。だから喫煙者に対してはそれほど良い感情を持っていないし、分煙は大賛成。
禁煙ファシズム」なんて言われると、「どこがファシズムなんだ」と思うが、この自販機は「禁煙ファシズム」的かもしれない。


先日、ICタグ読み取り装置付のコピー機を取り上げたときに、

ICタグを用いることで、紙のコピーにDRMが実現してしまう。

と書いたが、これは、喫煙家に対するDRMと言えるかもしれない。
仲俣さんは

これらを一つ一つなしくずしに認めてしまうと、その結果として起きるのは、「実空間のなかで人が匿名で行動する権利」がどんどん奪われていくという事態だ。

と書かれているが、私の懸念もほぼ同じである。


あともう一つ、自分の関心事項と関連づけるとすると、ダウンロード違法化と発想が同じように思う。
ダウンロード違法化は、本来なら違法にアップロードする人を取り締まるべきところを、それは難しいからと言う理由で、ダウンロードを違法化することで、一般のネットユーザーに不利益(違法・適法の識別をユーザーの責任とさせる)をもたらそうとしているが、このタバコ自動販売機は、本来なら未成年者の喫煙を取り締まるべきところを(それは難しいからという理由かどうかはわからないが)善意の喫煙者全体に個人情報の提供という負担を押しつけようとしている。
どちらも本来取り締まるべきところを取り締まらないで、善意の第3者に負担・不利益を押しつけようとしているところがなんか似ているような気がする。


ICタグをどのように使うかについては、導入の前にもっともっと慎重な検討と議論が必要だと思う。
自分もPASMOnanacoは便利なので使っているけど、便利さと引き替えに自分が何を手放しているのかについて、ちゃんと考え直してみたい。


なお、タバコ自動販売機については、パブリックコメントが行われているらしい。

『「製造たばこ小売販売業許可等取扱要領」の一部改正(案)』及び『「成人識別自動販売機の導入を製造たばこの小売販売業等の許可の条件とすることについて」通達(案)』に対する意見募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=395110708&OBJCD=&GROUP=


関連エントリ

MAL Antenna: たばこ自販機向け個人情報管理ICカード:実はパブコメ募集中
http://mal.cocolog-nifty.com/antena/2008/02/ic_dbd0.html

自動販売機と地域経済 : たばこ自動販売機規制についてのパブリックコメント募集
http://epole.exblog.jp/6781839/