J-POPはアジアで売れなくなっている

旅烏(id:banraidou)さんが次のように述べています。

違法コンテンツダウンロード違法化について少しだけ。

いや、つくづく、「これって輸入盤騒動のときとそっくりだなー」と思うんだけれど。

どういうとこがそっくりだと思うかというと、権利の創設を主張する側の狙いとは異なる副作用がでて、むしろその副作用の方が問題となるって構図が、もう生き別れの双子くらいそっくり。

このエントリーを読んだ後で次の記事を見つけた。*1

日本レコード協会、日本の楽曲の普及状況について報告会、今後は中国に力点 | BCNランキング
http://bcnranking.jp/news/0709/070928_8521.html

日本レコード協会音楽産業・文化振興財団が9月26日に開催した「第4回東京アジア・ミュージックマーケット概要説明及び日本音楽のアジア展開に関する報告会」についての記事で、アジア市場での日本音楽の状況を報告したものだ。
見出しに

●台湾、韓国、香港で日本の楽曲が人気、中国に期待し認証手続きを簡素化

とあるので、日本の楽曲が売れてきているのかと思って読んだら、全く逆。
日本の音楽は、アジアで売れなくなっているという内容だ。

新たに楽曲を販売する権利(新規ライセンス)を得たCDなどの06年出荷数量では、台湾が76万9000枚で前年比71%、韓国が35万枚で同79%と下降気味だが、一方香港は18万枚で同123%と伸びている実態を示した。

(強調:引用者)

数字を冷静に見てみると、大きな市場の台湾と韓国で20%以上も落としていて、市場の小さな香港で23%伸ばしているので、トータルとしては大きく数字を落としていると言うのが分かる。
なお、上記記事にはこれらの数字をグラフにしたものが掲載されている*2が、それを見ると減少具合が一目瞭然だ。さらに、そのグラフには韓国よりも大きな市場の中国の数字も掲載されていて、それによると前年比63%だ。
これを見てはっきりしたのは、アジアの市場でJ-POPは売れていないと言うことだ。

そこで「輸入権」に立ち戻りたい。
輸入権」は日本音楽がアジアに進出していくために必要だ、ということで創設された。
輸入権」ができたことで、日本の音楽業界は後顧の憂い無く、アジアにドンドン進出していくことができる。
そういう話だったはずだ。

ところが、ふたを開けてみたらアジアに積極的に進出していくどころか、アジア市場で売れなくなってきているではないか。
日本の音楽がアジアにドンドン進出して、アジアの市場でヒットを連発して稼ぐ、そしてその利益を日本の消費者に還元する。そういう話だったはずだ。
これでは、話が違う。

こんな状況では、「輸入権」なんて必要無いでしょう。
即刻「輸入権」は廃止すべきでしょう。



文化庁は、文化審議会著作権分科会は、この事態を重要なこととして受け止めてもらいたい。
法改正を行う際に、その目的が本当に果たせるのか、ただ単に業界の口約束だけではないのか、そしてその目的とそれによってもたらされる副作用の影響が何処まで及ぶのか、そういうことをきちんと検討してもらいたい。
現在検討を行っている事項、私的録音録画補償金の問題やダウンロードの問題、そして著作権保護期間延長の問題についても同じ危険性をはらんでいると言うことを充分に認識してもらいたい。

ITmedia ライフスタイル:「副作用」は覚悟していた――文化庁に聞く著作権法改正の舞台裏 (1/4)
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0405/13/news022.html

ITmedia ライフスタイル:「求めたのは還流阻止。CDでは他に方法がなかった」――レコ協に聞く (1/2)
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0405/17/news054.html

*1:この記事はCNETにも掲載されているが、是非ともBCNの方の記事を読んでいただきたい。

*2:CNETには掲載されていない