レンタルCDと再販制

知財推進計画のパブコメの結果の概要をざっと目を通してみたが、一つ目についたものがある。
音楽CDの再販制度に対する意見だ。

日本においてはレンタルCDという大変安価な手段での音楽供給形態があるので、もしも再販撤廃ならレンタルCDも撤廃しなければフェアではない。世界で例を見ないレンタルCD大義名分は「日本では音楽CDが再販制度で守られている為、消費者に安価での音楽供給が可能ではなく、レンタルCDがその代替として機能を果たす」ということだだからだ。


結果概要 18頁(PDF)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/060425/kekka.pdf

レンタルCDがユーザーに安価で音楽を提供していることはその通り。さらに、著作権者に対してもちゃんと著作権料を支払っている。ユーザーと権利者の」双方にとってメリットのあるレンタルCDという仕組みは、世界に誇るべきものだと思う。
むしろ、レンタルCDという優れた仕組みがあるため、音楽配信の普及を妨げているのではないかと、思うぐらいだ。CDのアルバムを1枚借りるのと、アルバム1枚分をiTMSで買うのと、どちらが安いかというと、レンタルCDだろう。それでありながら、きちんと権利者に対しては著作権料が支払われているのだから、本当に優れた仕組みだと思う。
ただ、私の不勉強で知らなかっただけかもしれないが、レンタルCD大義名分が再販制があることだというのは本当なのだろうか?
この点についてはこれから調べて見たいが、レンタルCDを撤廃しようと思ったら、現行の制度をいじることなく、今の著作権法の元でレンタルCDを撤廃することは可能なのだ。

著作権の中に「貸与権」という権利がある。

貸与権
第二十六条の三 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。

著作権は基本的には「許諾権」であり「禁止権」である。*1
レンタルCD著作権者から「許諾」を得てレンタルしているのであって、無断でレンタルしているわけではない。許諾を得た上で、著作権者に著作権料を支払っているのだ。
だから、権利者が本当にレンタルCDを撤廃したいと思うのなら、「許諾」しなければいい。大半の権利者が「許諾」しなければ、レンタルCDはやっていけなくなるだろう。*2だから、法改正することなく、レンタルCDを撤廃することは可能だ。
この意見を出した人、もしくは団体は、そのことを理解していないようだ。著作権について不勉強ではないだろうか。


もっとも、その前に再販制度レンタルCDとの関連性も疑わしいが。

*1:著作隣接権としての貸与権が実演家やレコード制作者にも与えられているが、こちらは1年間が「許諾権」「禁止権」で、その後は「報酬請求権」になる

*2:実際には、著作権管理事業者に権利を委託している場合が多いので、管理事業者の利用規程を変える必要があり、単純に許諾しなければいい、と言うわけではないが