日経の社説

これまで地方紙が社説で違法ダウンロード罰則化について取り上げたことを紹介してきた。

地方紙の社説 - shiraist's blog
http://shiraist.hatenablog.com/entry/2012/06/28/234503

地方紙の社説がもうひとつ - shiraist's blog
http://shiraist.hatenablog.com/entry/2012/07/08/230652

一方で、この件を社説出取り上げない全国紙に対して不満も述べたが、本日、ついに全国紙の日本経済新聞が社説で取り上げた。

クラウド時代の著作権制度作りを  :日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO43797810W2A710C1PE8000/

社説のタイトルの「クラウド時代の著作権制度作りを」という点については私も大賛成だ。
しかし内容的には、疑問に感じる部分もある。
まずはこの認識。

著作権法は無断で複製することを禁じているが、クラウドを使えば、いちいち複製しなくても情報を見ることができる。複製行為がなければ、違法な複製という行為も存在しない。そうした新しい技術に著作権法をどう合致させていくかが課題といえる。

クラウドになれば複製をしなくて情報を見ることができる、という認識について私は疑問に思う。
クラウドサービスでは、クラウド上の情報を閲覧する際に、端末への複製が行われると思うのだが。
まあ、これは解釈上の問題となるので、どう解釈されるのかは、今後注意して行きたいと思う。

そして、クラウド時代に向けて3つの視点が必要だと主張しているうちの2つの視点については、私も大賛成。
「守るより流通を」「罰則より教育を」この2つについては全面的に賛成する。


しかし、日経の社説の一番の問題は、残りの1つの視点として「複製でなく閲覧を」をあげているところだ。具体的は次のように述べている。

 「複製でなく閲覧」というのは、複製した場合に著作権料を徴収するのではなく、消費者が見に来た場合に「閲覧料」を取る仕組みを作ることだ。これまで録音や録画を行う機器や媒体に料金を課したが、クラウド利用が広がればこうした手段は時代遅れとなる。

これは、著作権法の根本を覆す主張だ。

現行の著作権法においては、基本的に複製行為とそれに準じる行為に限って、著作権を付与している。
逆に言えば、見たり、読んだり、聴いたり、感じたり、といった、個人がその著作物を享受する行為に対しては、誰もが自由に行えるのであって、そこに制限を加えることは許されないからだと思う。

日経の主張する、「複製でなく閲覧を」という主張は、私には絶対に認めることのできないものだ。

「守るより流通を」と「罰則より教育を」については全面的に賛同するが、「複製では無く閲覧を」だけは、絶対に許してはならないものだと私は思う。