公文書管理法と著作権の権利制限

5月27日に開催された文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第5回)の議事録が長らく公開されていなかったが、本日確認したところ公開されていた。

文化庁 | 著作権 | 著作権制度に関する情報 | 文化審議会著作権分科会 | 法制問題小委員会 | 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第5回)議事録
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h22_shiho_05/gijiyoshi.html

確か1〜2週間前ぐらいに確認したときにはまだ議事録は掲載されていなかったと記憶している。議事録の公開までに約4ヶ月かかったのは時間がかかりすぎだと思うが、それはおいておこう。


今期第5回の法制問題小委員会で議論されたのは主に「「公文書等の管理に関する法律」に関する権利制限について」である。
公文書館の管理する資料の中に著作物が含まれる可能性があることから、著作権及び著作者人格権が公文書管理法の第1条に定められた同法の目的の

この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。

の障害にならないように権利制限を行うことについての検討がなされている。
正直、的外れと思うような質問をしている委員もいるが、全体として利制限に前向きな方向で議論がすすんでいたようで、今回の検討については評価できる。


現在、著作権法では第44条の2で情報公開法による開示のための利用について権利制限が定められているが、この権利制限が定められる前は、地方の情報公開条例に基づく情報公開において、人格権を含む著作権を盾に、開示を拒否する事例があったと聞いている。
例えば、検索してみたら次の文献が見つかった。

CiNii 論文 -  著作権法上の公表権と情報公開・知る権利 : 神奈川県新築マンション平面図等公開請求事件 東京高裁平成3年5月31日民事第9部差戻後2審判決(控訴棄却・確定)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110004680996

このようなケースでは、著作権・人格権が方便として使われているだけで、著作権法の本来の目的を逸脱した権利の濫用だと私は考えるが、これと同じようなことが公文書管理において、絶対に起きてはならないと私は思う。
なので、公文書管理法に関する権利制限は、その制限の範囲をできるだけ広く定め、できるだけ迅速に法改正を行うことを望む。