電子媒体での二次利用について、文藝家協会と特定の新聞社グループ企業の間での綱引き

7月28日付で日本文藝家協会が次の声明を出している。

新聞社等からの「デジタル」利用許諾要請について(PDF)
http://198.104.48.111/pdf/20100730101751.pdf

詳細は全文を読んでいただきたいのですが、このPDFが画像ファイルでテキスト情報が埋め込まれていないので、肝となる部分について、テキストとして書き起こしました。

特定の新聞グループに属する電子媒体(デジタル)関連の企業から、著作物の電子媒体等での二次利用を求める「利用許諾者」が、日本文藝家協会の会員や元会員のご遺族に郵送されております。内容は、過去に同グループに属する新聞社発行の各新聞に執筆した原稿、また今後執筆する原稿等の同グループが保有するデータベースへの収録、上記デジタル関連企業が運営する電子媒体等での二次利用について、「対価なし」での許諾をかなり切迫した期限で求めております。これは、「デジタル」であれば、著作権者の上記各新聞に掲載された著作物について、いかなる形態の二次利用をも含む無制限な許諾要請であり、しかも、過去、将来ともに利用の対価を支払わないことの確認を求めるという、一方的な許諾要請です。

当協会は、7月12日開催の定例理事会でこの「利用許諾書」問題につきまして協議いたしましたが、「当面、返事を出さないことで何ら問題がない」という結論に至りました。手続上、あまりにもクリアされていない問題が多すぎるからです。そのため、当協会は、理事会の結論に従いまして、当協会の会報に当たります『文藝家協會ニュース』7月号で「返事は出さない」「ペンディングにしておく」ことを会員・準会員にお知らせしております。

新聞記事のデータベースを仕事でも個人でも使ったことがあるけど、特に新聞社外の人による署名記事やコメントなどが、「著作権」を理由に提供されていないことに、何度も困惑したことが何度もある。
今回の要請というのは、多分それらを解決する為のものではないかと想像する。
新聞者関連企業がそのような許諾を得ることは歓迎すべきことだと思うが、その許諾条件について「権利者」が交渉することは当然のことだと思う。是非とも双方合意の上で、新聞記事の二次配信が円滑に行われることを希望したい。


なお、日本文藝家協会は2月に「「出版契約」にあたってのご配慮について(お願い)」という声明を出している。

文藝家協会が出版協会に対して配慮をお願いしている - Copy & Copyright Diary
http://d.hatena.ne.jp/copyright/20100215/p1

今回の声明も合わせて、かつては一枚岩に見えた作家と出版社・新聞社の間で、電子化を巡ってギクシャクし始めている様子がうかがえるのが、興味深い。