文化審議会文化政策部会で文化芸術振興基本方針の見直し

ネット上には記事が出ていないようだけど、2月6日の朝日新聞に次のような記事があった。

文化政策見直し開始へ
 川端達夫文部科学相は5日の会見で、国の文化芸術振興の方向性を示す第2次基本方針(2007年〜12年ごろ)を見直し、第3次基本方針を策定すると表明した。10日に初会合を開く第10期文化審議会へ、川端文科相がひょうぼうするソフトや人材重視の文化政策の方向性の審議などを諮問する。夏前頃に中間報告を求め、11年度予算概算要求の予算案に反映し、11年の閣議決定を目指す。(大室一也)

朝日新聞.2010年2月6日(土).5面.

川端文科相の会見は下記で見ることができる。

文科相のサイトの大臣記者会見録では、本日現在まだテキスト化されていないが、数日後にはテキスト化されると思うので、後日確認していただきたい。

大臣記者会見録(平成22年2月5日):文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1290046.htm


記事にあった文化芸術振興の基本方針は、平成14年に文化審議会から答申された「文化芸術の振興に関する基本的な方針について」のことだと思う。
平成14年に出された答申。

文化庁 | 文化審議会 | 総会 | 「文化芸術の振興に関する基本的な方針について」(答申)
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/soukai/kihonhoushin_toushin.html

この基本方針は平成18年に文部科学大臣からの諮問に基づき、平成19年に見直しの答申がされている。

文化審議会「文化芸術の振興に関する基本的な方針の見直しについて(答申)」について(PDF形式(601KB))
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/soukai/pdf/bunkageijutu_housin_minaosi.pdf

これらにざっと目を通して見たところ、著作権に関しても盛り込まれていた。
まず、平成14年の答申。ネットワーク上の著作権保護強化が盛り込まれている。

8.著作権等の保護及び利用
 文化芸術の振興の基盤を成す著作権等について,国際的な動向を踏まえるとともに,「知的財産基本法」(平成14年法律第122号)及び「知的財産戦略大綱」(平成14年7月3日知的財産戦略会議決定)に沿って,その保護の充実を図るため,次の施策を講ずる。
・メディア芸術を支えるデジタル・コンテンツ産業も含め,著作者等の権利の適切な保護を図るため,国際的に条約の検討が進められている放送事業者や実演家の権利の拡充など,ネットワーク上での著作権の保護強化等を図る
・我が国では,著作物等の創作時・利用時における契約システムが十分に機能していない面があるため,権利者や利用条件等が曖昧(あいまい)となり,適切な保護や円滑な利用の促進に支障が生じているとの指摘がある。このため,著作物等の適正かつ円滑な流通を促進する観点から,新技術と著作権契約システムを組み合わせた著作物等の新しい流通システムの構築に向けた取組を支援する。また,ネットワーク上での著作権契約システムの研究開発や,著作物等の利用可能範囲に関する権利者の意思表示システムの開発・普及を行う。
・国内外において我が国の著作物等の海賊版を防止・撲滅するため,官民が連携して対策に取り組む体制づくりを行うとともに,二国間,多国間の枠組みを通じ,適切な保護を求める。
・デジタル化,ネットワーク化に対応した国際的な著作権保護を進めるため,WIPO世界知的所有権機関)などで行われている新たな国際ルールづくり等において積極的な役割を果たす。
・インターネットやパソコンの普及など,情報技術の発達・普及による権利者及び利用者の急激な拡大により,著作権に関する知識や意識がすべての人々に必要不可欠なものとなり,著作権の保護や適切な契約の習慣が広く多くの人々に受容される状況を作っていくことが,必要となっている。このため,学校教育,ネットワークを利用した情報提供など,様々な方法により,著作権に関する知識と意識の普及を図る。
著作権の侵害については,基本的に,権利者自らが侵害の事実を発見・立証する必要があるが,情報通信技術の進展に伴う著作物等の創作・利用形態の多様化が進むに従い,権利侵害行為や損害額の立証などが困難になってきている。このため,著作権に係る権利行使の実効性を確保するため,司法による権利救済に係る諸制度の充実を図る。

(強調:引用者)

http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/soukai/kihontekishisaku_7-11.html

次に平成19年の見直しの答申では、私的録音録画補償金や保護期間についても言及していた。

8.著作権等の保護及び利用
文化芸術の振興の基盤を成す著作権等について,国際的な動向を踏まえるとともに,「知的財産基本法」(平成14年法律第122号)及び「知的財産推進計画」(知的財産戦略本部決定)に沿って,その適切な保護及び公正な利用を図るため,次の施策を講ずる。
・技術の進展などの時代の変化に対応するため,私的録音録画補償金制度や保護期間の在り方等について検討を進め,必要に応じて法制度の整備を行う。また,その的確な運用,著作権制度や著作物の流通に関する調査研究の実施,著作物の流通促進のためのシステムの構築等を行う。
・国内外における我が国の著作物等の海賊版の流通を防止・撲滅し,文化的創作活動や国際文化交流を推進するため,侵害国等への働きかけ,海外における著作権制度整備支援,権利者による権利行使支援,官民連携の強化,諸外国との連携の強化等を行う。
・情報通信技術の発達により,著作権に関する知識や意識がすべての人々に必要不可欠なものとなっていることから,対象者別セミナーの開催,学校教育,文化庁ホームページを利用した著作権教材の提供など,様々な方法により,著作権に関する知識と意識の普及を図る。

(強調:引用者)

http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/soukai/pdf/bunkageijutu_housin_minaosi.pdf


今度の見直しにおいても、著作権について盛り込まれることが予想されるので注意していきたい。
なお、「文化芸術の振興に関する基本的な方針」はこれまで文化審議会文化政策部会で審議が行われて来たので、今回も文化政策部会で審議されると思われる。

文化庁 | 文化審議会・懇談会等 | 文化政策部会について
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/seisaku/index.html

既に、第8期文化政策部会(第1回)の傍聴案内が出ているが、第10期の文化審議会総会の直後に開催される模様だ。

文化庁 | 文化審議会・懇談会等 | 文化政策部会について | 第8期第1回 | 傍聴案内
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/seisaku/08_01/annai.html

文化審議会著作権分科会の審議だけでなく、文化政策部会の審議にも注目する必要があるだろう。
昨年鳩山総理と川端文科相著作権保護期間の延長に前向きな発言をしたことを考えると。

追記

2月5日の大臣会見がテキスト化されたので、関連発言をピックアップする。

もう一点は、このたび、文化審議会の委員が、任期満了に伴い改選となり、本日付けで第10期文化審議会委員として20名の委員を発表させていただいたのは、御案内のとおりだと思います。文化芸術は、過去から未来へ受け継ぎ、人間性をはぐくむということにおいても大変大事なことというのは申すまでもありませんが、経済や国際協力も含めて、我々の営みの根幹を成すものとして、鳩山内閣でも先般から、大変大事であるという位置付けをされてきたところであります。予算も1,020億円、過去最高額を計上したところでありますけれども、私としては、文化芸術の振興を国策上の重要政策と位置付けるために、第3次の「文化芸術の振興に関する基本的な方針」の策定を念頭に、文化審議会に諮問をしたいというふうに思っております。国の施策としての文化芸術振興の意義と基本的視点と重点施策、この3点について、新しく発足した文化審議会に対して、第3次の文化芸術の振興に関する基本的な方針の策定を、2月10日に開催される文化審議会総会において諮問をする予定にしております。なお、現行の第2次基本方針は、平成19年2月から概ね5年間を対象期間としておりますので、このたびの諮問を受け、基本的に前倒しで見直しをお願いしたいと。今、第2次が平成19年から5年間で動いておりますけれども、非常に大事な問題であるということで、メンバーの交代を機に、第3次の基本計画の策定をお願いして、うまく成案を得られた時点で、新しい方針の下にやるということを考えたいと思って、10日に諮問をさせていただきます。

大臣記者会見録(平成22年2月5日):文部科学省

記者)
文化審議会の件なんですけれども、まず、自民党政権のときに作られた現行の2次方針の途中なのに、なぜそこで見直すのか、民主党マニフェスト文化政策がないことが、文化人の方に批判されているからかというのが一点と、2次方針は大体5年間ということですけれども、第3次は、およそ何年ぐらいを目指すのかというのが二点と、後、最後なんですけれども、内閣官房参与平田オリザさんは、劇場法の制定を要望していますけれども、劇場法についても諮問で議論を求めるつもりなのか、以上の3点についてお伺いします。


大臣)
諮問の中身に関しては、そういう個々具体な話を諮問するわけではありませんので、先ほど申し上げたように、文化芸術の振興の意義と基本的視点と重点施策ということであります。そして、文化芸術の振興ということが、非常に国民的にも関心が、例の事業仕分けでも非常に高まっているということと同時に、多様な価値観の中で、やはりこの分野に関しての国民の見方、それから世界の位置付け、環境も大きく変化してきているというふうに思いますので、別に民主党文化政策がないとか、あるとかということではなくて、新しくメンバーもちょうど替わっていただいたところでありますので、そういう立場から、一回じっくり議論をしていただきたいという思いで、こういう諮問をすることにいたしました。これから政策部会等の議論をしていただいて、夏ぐらいまでに中間的な報告をいただいて、一年間ぐらいはその部分を議論して、これから1年半ぐらい以降で答申をいただけるぐらいが日程かなという、その後、閣議決定というふうにしたいなということで思っています。


記者)
そうなると、現行の、新しくなった委員の人の任期も変わってしまいますよね。


大臣)
今年中間報告から来年に向けてということになると、ちょうど一仕事ではないでしょうか。ですから、進捗状況にもよると思いますけれども、前倒しになるのかどうかということもあると思いますけれども、文化芸術政策が何か政権によって大きく変わるということではないというのが、本来のものだと思います、こういうものは。ただ、メンバーも新たになりましたので、じっくりと、途中からではなくて、途中で終わるという、任期の問題としては一番、スタートからということでちょいど良いんではないかというふうに思っております。他意はありません。


記者)
3次の期間というのは、次の総選挙の前ぐらいまでの期間に設定するのか、それとも今の現行のように大体5年ぐらいとか。


大臣)
個々の御議論にもよると思うんですけれども、5年というのが普通だと思います。これに選挙がどうこうということは、基本的に念頭にありません。


記者)
見直しに関しては、新しくメンバーが変わるというのも一つの時期とおっしゃいましたが、総理の施政方針等でもですね、文化に関しては、非常に興味関心を持っておられます。大臣としても今までのもあるんですけれども、ここで御自分としての思いというかですね、何かを込めたいというのは。


大臣)
もちろん、そうですけれども、基本方針とこの視点と施策という中には、諮問をお願いするときの諮問文書の中に思いは込めたいというふうに思っています。


記者)
例えば、どういった。


大臣)
それは10日に申し上げます。


記者)
24年度からになる可能性もある。


大臣)
時期はちょっと分かりませんね。


記者)
前倒しになるにしても、2年も3年も前倒しになるわけではなくて、せいぜい半年程度ですか。


大臣)
平成19年から、今度、平成22年で4年目ですから、その部分では、5年じっくりやったら次にバトンタッチみたいになるというタイミングになるかもしれないし、うまくいって1年ぐらい前倒しにできるかもしれないというぐらいですから、何か前倒しをしたいとかというわけではないです。


記者)
ないんですね。


大臣)
今のをできるだけ早くやめたいとか、そんなことは全くありません。

大臣記者会見録(平成22年2月5日):文部科学省