日経産業新聞に還流防止措置の記事

昨日(4月2日)の日経産業新聞の1面に、小さいが音楽CD還流防止措置の記事が掲載されていた。

還流CDに待った(DataFocus)
2009/ 04/ 02日経産業新聞p.1

財務省が3月6日付けで発表した「平成20年の税関による知的財産侵害物品の差止状況(平成21年3月6日)」に記載されている「各年末時点における有効な輸入差止申立ての件数の推移」のグラフを用いて、

CD・レコード類の差し止め件数が急増しており、今後も申し立ては増えそうだ。

と述べている。
記事では、若干アレンジしてあるが、財務省の報道発表に記載されているグラフは下記のもの。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kanzei/chizai/ka210306_img/07.gif
著作隣接権による輸入差し止め申立の対象は音楽CDの還流防止のためのものだ。
音楽CDの還流防止のための著作権法改正が2004年になされ、2005年から施行されている。


見て頂ければ分かるように、著作隣接権による輸入差し止め申立件数が増えていることがよく分かる。
では、申立件数が増加していることから、2004年の著作権法改正はその目的を充分に果たしていると見ることができるのだろうか?


私はそうは思わない。
何の為に音楽CDの還流防止措置を設けたか、そこに立ち戻って見る必要がある。


音楽業界からの強い要望によって、リスナーの猛反対にも関わらず音楽CDの還流防止措置は設けられたが、音楽業界はその当時「アジアに出て行くために必要だから」だと述べていた。

ITmedia ライフスタイル:「求めたのは還流阻止。CDでは他に方法がなかった」――レコ協に聞く (1/2)
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0405/17/news054.html

なので、音楽業界はアジアに進出し、アジア市場で日本の音楽が受け入れられて、大ヒットを連発するようになって初めて、音楽CDの還流防止措置導入の目的が果たせたことになる。


では、アジア市場で日本の音楽は売れているのだろうか?
1年半前に次のエントリーを書いたが、アジアで日本の音楽が売れるようになった訳では無い。

J-POPはアジアで売れなくなっている - Copy & Copyright Diary
http://d.hatena.ne.jp/copyright/20071002/p1

その後の状況がどうなったのか、報道がなされていないので分からないが、劇的に好転しているとは思えない。


2004年の法改正の審議から5年、法改正の施行から4年が経過している。
そろそろ、本当にあの法改正がその目的を果たしているかどうかの検証をちゃんと行う必要があるのではないだろうか。
そして、その目的を果たせていないのであれば、還流防止措置を廃止すべきだと私は思う。


なお、1年半ほど前にこのような質問趣意書答弁書が出されている。

我が国音楽産業のアジア市場進出状況と商業用レコードの還流防止措置施行状況に関する質問主意書
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a168217.htm

衆議院議員川内博史君提出我が国音楽産業のアジア市場進出状況と商業用レコードの還流防止措置施行状況に関する質問に対する答弁書
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b168217.htm