図書館の現実、自治体の図書館の活用

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図書館の活動と経営 図書館の最前線 5(大串夏身)●版元ドットコム
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-7872-0040-2.html

公共図書館の経営について、指定管理者やPFI、ボランティアなど、様々な事例を紹介にしている。
指定管理やPFIの事例などを読むにつれ、公共図書館がいかに厳しい状況に置かれているのかが伝わってくるが、正直なところ、ここで紹介されている事例は、あくまでも厳しい状況の中で努力し、一定の結果を出している事例ではあるが、これらの事例が望ましい姿かどうかに対しては、疑問を感じた。
特に山中湖情報創造館の事例の中で、指定管理者の職員の平均年収が180万円である*1という現実には愕然とした。
このような賃金では、数年間は個人の努力で何とかなるかもしれないが、長期にわたる運営が本当に大丈夫なのか、疑問を感じた。*2

一方で、興味を引かれたのは鳥取県立図書館の事例。
鳥取県は片山知事の時代に図書館に力を入れいていたが、その時代に2年間館長を務めた野川氏が第1章を書かれている。
もちろん、行政のトップが力を入れているのだから、図書館が充実するのは当然かもしれない。
しかし、私が興味を引かれたのは、野川氏が館長の職を離れ、財務課に異動してからのエピソード。
その箇所を引用する。*3

図書館の勤務を経て思い知らされたのは、二〇〇八年度の当初予算編成をおこなう課程では、各部局から次から次へと繰り出される要求のなかに図書館を活用したものはほとんど見受けられないということだった。

そして野川氏は、ある調査の外部委託費用の要求に対して、図書館を活用できないかと差し戻し、ある事業のためのパネル展示の会場を図書館で行うようにアドバイスしたりしたという。
そして野川氏は

これらのことを逆に言えば、図書館はこうした活用法をこれまで行政に宣伝してこなかったことになるのだが、この点については、図書館関係者は大いに反省すべきだろう。

と述べている。*4
まえに「募金の集まらない図書館についての本を読んで」というエントリーを書いた時に

その状況の中では、利用者に対するアピールと同じぐらい、首長や議会に対するアピールが必要のように思う。

と書いたが、自治体の職員に対しても同じようにアピールする必要があるということだろう。
自分が企業内専門図書館の運営を担当していたときに、同じようなことがちゃんとできていた訳ではないので、偉そうなことは言えないのだが。

*1:本書236ページ

*2:現在運営している方々には敬意を払います。

*3:本書28ページ

*4:本書29ページ