不十分な書誌情報

小田光雄氏の出版社と書店はいかにして消えていくか―近代出版流通システムの終焉を読んだ。
1999年にぱる出版から出ていて、長らく気にはなっていたのだけど、昨年の秋に本書の続編とも言うべき出版業界の危機と社会構造を読んで、やっぱり読みたくなって、この度論創社から再刊されたので読んでみた。
出版不況が言われ始めてから10年ぐらい経つが、その初期に書かれた本書でも、現在の問題の大半がカバーされていて、出版不況の根の深さはとてつもないものだと思った。
著者らの意見については、賛同できるところとできないところがあるが、出版界に対する(10年前の)現状認識・現状分析はとても興味深い。

ただ、本書について、1つ大きな点が気になった。
前述の通り、本書は1999年に出版されたものの再刊だが、初版には収録されていなかった文章が収録されており、「増補新版」として再刊されている。そしてそのことは「まえがき」に書かれている。
しかし、書名に「増補新版」の文字はなく、表紙、背表紙、タイトルページ、奥付にもその記載がない。
まえがきを読むか、目次の中に「旧版まえがき」と「旧版あとがき」の文字が記されているので、目次を見て「新版」らしいということでしか、本書が「増補新版」であることがわからない。
Amazonの書誌情報を見てもやはり「増補新版」は記されていない。
さらに旧版がマーケットプレースに出品されているので、出版年の異なる同じ書名のデータが出てくるので、利用者としては混乱しかねない。

新版
旧版
出版社と書店はいかにして消えていくか―近代出版流通システムの終焉

出版社と書店はいかにして消えていくか―近代出版流通システムの終焉

なお、ビーケーワンでは内容説明のところで「増補新版」であることが記載されている。さすがはTRCだと思う。

オンライン書店ビーケーワン:出版社と書店はいかにして消えていくか 近代出版流通システムの終焉
http://www.bk1.jp/product/02973175
screenshot

出版流通について述べている本なのだから、書誌情報もしっかりしたものを作って欲しいと思う。


なお、新版の出版元の論創社版元ドットコムの参加版元でもある。
版元ドットコムは出版社が自らインターネット上で本の書誌情報を提供していこう、という団体で、版元ドットコムのデータベースには、書誌情報に加えて、目次情報や著者紹介、まえがきなど、出版社が提供したい情報も収録されている。
しかしながら、論創社のデータには、書誌情報以外の情報は記載されていないようだ。

出版社と書店はいかにして消えていくか 近代出版流通システムの終焉 (小田光雄)●版元ドットコム
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-8460-0773-7.html
screenshot

出版業界の危機と社会構造 (小田光雄)●版元ドットコム
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-8460-0771-3.html
screenshot

版元ドットコムに参加してはいるものの、書誌情報の提供には熱心ではない出版社のように思える。
残念だ。