ICタグで紙のコピーにDRM

去年の7月18日付のエントリーの続報。
コピー機ICタグ読み取り装置をつけた複写管理システムの実験に成功したとのこと。

日立など4社、無線ICタグを使った「著作物の複写利用管理システム」
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/02/15/18468.html

「書籍にRFID、コピー枚数に応じ権利者に支払い」――日立など実証実験:ITpro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080215/293937/

無線ICタグで印刷著作物の違法コピーを管理、日立などが実験 − @IT
http://www.atmarkit.co.jp/news/200802/15/rfid.html

日立とリコーら、無線ICタグによる著作物の複写利用管理システムの実証実験に成功:Enterprise:RBB TODAY (ブロードバンド情報サイト) 2008/02/15
http://www.rbbtoday.com/news/20080215/48746.html

紙のコピーにもDRM? 日立など、ミューチップ活用で - ITmedia News
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0802/15/news124.html

asahi.com:無線ICタグで「タダコピー」防げ 実証実験に成功 - ビジネス
http://www.asahi.com/business/update/0215/SEB200802150005.html

元々、企業内での文献のコピーの問題から著作権に取り組むようになった私にとっては、このニュースはとても大きなものです。
ICタグを出版物につけることで、DRMと同じようなことができてしまうからだ。
このコピー機を使うことで、どのような出版物のコピーが、何枚取られたかのモニタリングが可能になってしまうし、それに応じて複写使用料を徴収されてしまう。
そんなの当たり前じゃないか、と思う人がいるかもしれないが、例えば特許関連や薬事申請関連の複写は権利制限されている。しかし、このコピー機は複写の目的を認識するものではないだろう。権利制限の範囲のコピーであっても、複写使用料を徴収されかねないだろう。

また、コンビニなどに設置されているコピー機がこれになった場合、そこでのコピーは30条の私的複製の範囲から外れることになるだろう。
現在、著作権法第三十条第一項第一号により「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合」は30条の私的複製に含まれないとされているが、附則第五条の二において「専ら文書又は図画の複製に供するものを含まない」とされているので、コンビニなどに設置されているコピー機での複写が30条の私的複製に含まれる。これは、複写においては許諾・使用料の徴収の体制ができていないためこのような附則が設けられているのだが、このコピー機にが普及した場合、この附則が削除される可能性も出てくる。
コンビニでのコピーは私的複製とは認められなくなる方向に行きかねない。
ICタグを用いることで、紙のコピーにDRMが実現してしまう。
前に「私的複製を認めない社会」というエントリーを書いたが、デジタルデータの複製だけでなく、紙のコピーにおいても私的複製を認めない方向に進みかねない。
出版物にICタグをつけるというのは、そういうことなのだ。
奇しくも今週になって、図書館にICタグを活用するという記事やエントリーが書かれている。

図書館で急速に高まるRFIDニーズ、導入の先に見える未来とは? − @IT
http://www.atmarkit.co.jp/frfid/rensai/edge/02/01.html

ICタグがやってきた! (TRC データ部ログ)
http://datablog.trc.co.jp/2008/02/13163552.html

どこにいるかもわかります 〜ICタグがやってきた!2〜 (TRC データ部ログ)
http://datablog.trc.co.jp/2008/02/14163635.html

行ったところもわかります 〜ICタグがやってきた!3〜 (TRC データ部ログ)
http://datablog.trc.co.jp/2008/02/15165729.html

しかし、このような無邪気でいいのだろうか。
本にICタグをつけると言うことは、本をDRMの対象とすることだ。
そうなると、31条の図書館における複製でさえ、安泰ではない。
そのような危険性をしっかりと認識して欲しい。

また、このコピー機がどのように運用されるのかについても、しっかりと監視していく必要があるだろう。