図書館が購入すべき本は何か

Google Newsで図書館のニュースをチェックしていると、資料費削減の記事がちょくちょく出てきて、公共図書館の現場は厳しい状況にあることが分かるが、次の記事を読んで、「ちょっと待て」と言いたくなった。

広がる資料費削減 県内公立図書館 情報機能低下を危ぐ - 山陽新聞ニュース
http://www.sanyo.oni.co.jp/sanyonews/2007/10/30/2007103009010466007.html

私は、公共図書館でベストセラーを貸し出して何が悪い、複本を購入するのは当然だ、と言うことをこれまで主張してきたし、今もその思いには変わりはない。しかし、次の記述を読むと、ちょっと考えてしまう。

本年度、資料費が前年度比39・4%減の408万円と県内最大の削減幅となった美作市では、2005年の新市発足以降、1冊の本を複数の市立図書館で使い合ったり、利用頻度の高いベストセラーや新書を中心に購入するなど“節約”に四苦八苦。写真集や辞典など高くつくものは、同市を含めた多くの自治体が購入を控えているという。
(強調:引用者)

再度言うが、私は公共図書館がベストセラーを貸し出すことを否定しない。
しかし、蔵書構成として、ベストセラーの購入の最優先すべきだとは思わない。
各図書館にとってなにを優先すべきかは、その図書館の置かれている状況によって変わってくると思うが、ベストセラーや新書を中心に購入するのが「節約」と書かれてしまうと、それは違うんじゃないかと思う。
そして「辞書」の購入を控えている、というのはマズイとおもう。
これは自分が元々企業内専門図書館の業務を長く担当していたことからそう思うのだけど、図書館は何かを調べるためにある、と自分は思っている。
もちろん、小説を貸し出すことも重要な役割だし、自分が高校生の時は図書館からたくさんの本を借りて読んでいた。だから、ベストセラーを購入するなとは言わないが、でも「辞書」がそろっていない図書館では、調べ物はできないだろう。
「辞書」といっても、広辞苑などの国語辞典や、漢和辞典、英和辞典、和英辞典だけが「辞典」ではない。
経済学や医学、化学などの各分野には基本的な辞典があるし、環境問題やナノテクといった最近になって出てきた分野の辞書も各種ある。それら、何かを知りたいと思ったときにとても役に立つ。
そして、それらの辞書類は個人で買うには高額である場合が多い。個人で各分野の辞典を1冊購入することですら大変なのだから、個人で必要な辞書を全部揃えられる人と言ったら、ごくわずかな人しかいないだろう。
だからこそ、図書館がそれらの辞書類を揃えておく必要があると思う。


ただ、図書館では基本的に辞書は貸し出さない。貸出実績としてカウントできないので、どれだけ利用されていても、数字としてその実績をアピールすることは難しいと思う。でも、だから購入しないというふうになってしまうのは、図書館として本末転倒ではないだろうか。