過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会議事録を読む−音楽配信分野

音楽配信分野では音楽電子事業協会の戸叶司武郎氏からヒアリングを行っています。

文化審議会 著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第2回)議事録・配付資料−文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/021/07050102.htm

配付資料
音楽電子事業協会、ネットワーク音楽著作権連絡協議会
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/021/07050102/008.htm

戸叶司武郎氏の発言

私はかねてから、著作権等管理事業法は利用者に不利な法律だと述べてきましたが、戸叶氏の発言でその思いをさらに強くしました。

最近、著作権等管理事業法が施行されてから管理コストが激しく上がってきております。また、それに伴って無許諾での使用をせざるを得ないという状況も出てきており、今、CPは大変悩んでおります。

この発言の後、著作権等管理事業法の施行によってどのような事態が起きているかを説明してます。

 権利者が移動することに伴うトラブルが最近多発しております。例えばある作家さんが、JASRACジャスラック)に権利を預けていたところからイーライセンスに権利を移したと。その場合に移したことがCPには告知されません。正確に言いますと、公開はされますけれども、例えば10万曲の中の1曲1曲を我々が自ら調べに行かないと移ったことが分からない。つまりCPはJASRACジャスラック)が従来どおり管理していると思って、その権利者の楽曲の使用実績を報告する。JASRACジャスラック)は実績報告を受け取るけれども、その楽曲は管理対象外となっているので、使用料をCPに請求しない。結果として、その作家さんの著作物使用料が作家さんにロイヤリティとして分配されない。こういうトラブルが最近多発しております。

著作権等管理事業法が制定される際に、複数の管理団体ができることで、利用者側の負担が増えるのではないかという懸念がありました。しかし、J-CIS構想というのがあり、複数の管理事業者の管理著作物データベースをまとめて調べることができる仕組みを作る、とされていました。この構想が実現すれば利用者の負担は増えないということで管理事業法は制定されました。
しかし、現実はどうなっているかと言うことを戸叶氏が述べています。
さらに、著作権情報の管理についても問題点を述べています。

これは私が勝手に付けてしまったんですが、業界用語になっている「サブマリン作家問題」というのがございます。例えば1つの楽曲に3人の著作権者がいて、1人だけがJASRACジャスラック)のメンバーだった場合、許諾率は33パーセントになります。3人のうち2人がメンバーであれば66パーセントになります。4人のうち3人であれば75パーセントになります。66パーセントや75パーセントで配信をしていいかどうか、これはすべてCPの自己判断、自己責任でやっております。
(中略)
 私どもCPとしては、このようなコンテンツを配信した後でサブマリン権利者から許諾を取るということをしております。万が一許諾が取れなかった場合は、CP各社が独自の対応ルールを設定したり、例えば保険商品を開発したりとか、様々な努力をしておりますけれども、もう既にこれは限界に近づいているというのが現状でございます。

著作権情報のデータベースを構築すれば延長しても良いのではないかという議論がありますが、このような状況を踏まえればそんなに簡単なことではないと思います。

質疑

都倉委員の質問

 今、お話を伺っていると、この保護期間延長反対の一番の理由は、そういう1つの毎日の作業にお金と暇が非常にかかる。70年に延長するということでもありましたけれども、僕はそれはある程度のそういう官民一体となったポータルサイト、これはすごい話らしいんですね、僕はお話しか知らないのですが。映画から、それこそパチンコの権利まで全部網羅したポータルサイトだと。これがもしそういう官民で作られるようになったら、僕はかなり今おっしゃったようなことは解決できるのではないかと思いますけれども、NMRCとしてもそういうことは当然御承知でしょう。

都倉委員の質問は、戸叶氏の説明をきちんと聞いていないのではないでしょうか。
現状においても、つくると言っていたはずのものができなかったり、データベースでは解決できない事があると言うことを述べているにもかかわらず、できてもいなポータルサイトを挙げて、それで解決できると言い切ってしまうのは、あまりにも軽率だと思いますし、現状の問題を理解していないと思います。