過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会議事録を読む−文芸分野
文芸分野では、社団法人日本文藝家協会の坂上弘氏、共同組合日本脚本家連盟の寺島アキ子氏、協同組合日本シナリオ作家協会の西岡琢也氏からヒアリングを行っています。
文化審議会 著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第2回)議事録・配付資料−文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/021/07050102.htm
配付資料
社団法人日本文藝家協会
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/021/07050102/001.htm
共同組合日本脚本家連盟
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/021/07050102/002.htm
協同組合日本シナリオ作家協会
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/021/07050102/003.htm
それでは、それぞれの発言から気になる箇所をピックアップしていきます。
坂上弘氏の発言
坂上氏は著作権保護期間の延長を訴えています。
気になる箇所はここ。
私ども作家の国際交流もグローバルな活動というものが随分大きくなってまいりまして、実際に交流の場などでは日本の保護期間が50年ということでは、非常に返答に困るような議論も出てきております。
配布資料では
グローバルな規模での文芸活動の姿が浮かび、作家の国際交流も盛んな今日、交流の場で「どうして日本だけ保護期間が50年なのか」と問われて、返答に困る。
となっています。
これについては、そのような質問をする方がおかしいと思います。
著作権法は国ごとによって違います。保護期間だけでなく、権利の範囲、権利制限の範囲もまちまちです。昨年日本は罰則として、国際的に見ても非常に厳しい懲役刑を課しています。*1保護期間だけをとって語るのはおかしいのではないでしょうか。
寺島アキ子氏の発言
それから、著作者不明については、脚本家連盟ではまず連盟員に関してはあり得ません。
この世の全ての著作権者が脚本家連盟の連盟員になっているのならば問題はありませんが、連盟員である著作権者はごく一部に過ぎません。脚本の分野でも100%加入しているわけではないと思います。
民放局とNHKが共同して横浜にアーカイブ施設を作っています。そこにドキュメンタリーのいいものはほとんど収集されていますが、ドラマの場合は、ドラマも最近、横浜のアーカイブは一部収集するようになりましたが、収集しても連続ドラマを全部見に来る人はおりませんし、連続ドラマの何回目だけを見たいなんていう人もあまりいないでしょうし、実際には今横浜でやっていらっしゃる程度かなと思っております。
多分放送ライブラリーの事を言っているのだと思いますが、それは当然でしょう。地理的な問題があります。ドラマの特定の回だけを見るために横浜に行かなければならないのなら、その近所に住んでいる人ならともかく、あきらめるのが普通ではないでしょうか。
それから、知名度も低いですし、どのような番組を見ることができるのかもわかりにくいです。サイトでは番組検索ができますが、キーワード検索だけで、一覧からブラウズすることはできません。これではわかりにくいです。
あと、収集されている範囲が狭すぎます。試しに「仮面ライダー」「ウルトラマン」で検索してみましたが、それぞれ7件、9件しか検索されませんでした。「大河ドラマ」で検索したら80件出てきましたが、大河ドラマの歴史を考えると少なすぎます。
まず、連続ドラマを全部見られるようにすることが先決なのではないでしょうか。
西岡琢也氏
アーカイブについての次の発言に注目したい。
アーカイブに関しては、映像に関するアーカイブという議論なんでしょうけれども、我々脚本家にとっては脚本自体が大切な著作物でありまして、今、大谷図書館という昭和30年でしたか、昔から脚本の保存・収集に当たっていらっしゃいますけれども、脚本それ自体の保存・収集に当たって非常に篤志的な、あるいはボランティア的な方法で今行われているというのはどうかなと思いまして、日々作られているテレビ、映画に関して十全に保存・収集がなされているとは思えない。脚本家の厚意だったり、あるいは働く人のボランティア精神によって支えられているというのが大谷図書館の現状なので、脚本それ自体への目配りもして頂きたいなと思って書き添えました。
脚本自体も著作物だし、脚本のアーカイブも必要だと思います。それに関しては、映画界・放送界・そして脚本家・シナリオ作家全体で取り組むべき課題だと思いますし、国などの支援も必要かと思います。
質疑
中山委員の坂本氏への質問。
日本文藝家協会にお伺いします。外国との関係で日本が50年だと恥ずかしいというお話なんですが、なぜ恥ずかしいのかということをお伺いしたいと思います。私は著作権法の学者ですし、著作者でもありますが、むしろ胸を張って、外国に対しておたくのほうが間違えている、全然恥ずかしいことはない、という気持ちですが、なぜこれが恥ずかしいのかということを説明して頂きたいと思います。
議事録では、坂上氏は「恥ずかしい」とは発言していませんが、中山氏の聞きたいところは、上記で取り上げた部分ではないかと思います。
それに対して
坂上氏は
70年で保護されている国と50年で保護されている国の間で文化的な価値のやり取りをする場合に、私どもは50年で切れているから、おたくの70年の価値を認めないで活用させて頂くということを言うこと自体は、ちょっと議論にならないし、そういうことが私ども文芸家同士で議論しているときには返答に困るという意味です。
坂上氏はベルヌ条約における保護期間の相互主義の事を言っているのだと思いますが、相互主義を否定されるということでしょうか。
*1:私はその法改正はすべきではなかったと思っています。