「本」は「文化財」

国立国会図書館の寄贈の礼状が悪用されているらしい。

国立国会図書館からの御注意
当館により「文化財」の「認定」を受けたと称する文書について
http://www.ndl.go.jp/jp/attention/warning.html

国会図書館が「文化財」の「認定」をするのか? と思ったらやはりその通り。

当館には文化財保護法等の法令に基づき文化財を認定する権限はありません。

と明言している。
そして今回のケースは、国会図書館が送った「寄贈礼状」が悪用されたらしい。

当館により文化財認定を受けた証拠として、寄贈された出版物を「文化財として永く保存する」と述べた当館からの寄贈礼状の写しを添付しているようですが、この礼状は、当館に出版物を御寄贈いただいた方々すべてにお送りしているものです。当館は、国内で発行された出版物を納本制度に基づき網羅的に収集し、個々の内容について価値判断を行うことなく、すべてを保存することとしておりますので、こうして蓄積された出版物は、後世に伝えられ、総体として広い意味での文化財の一部となります。寄贈礼状では、このような意味で「文化財として永く保存する」と申し上げて参りましたが、当館が特定の出版物を文化財として認定することはありませんし、内容について評価することもございません。

著作権登録制度を悪用している人もいるのだから、この礼状を悪用する人がいてもおかしくはない。
そう言う点では国会図書館も脇が甘かったかもしれないが、上記引用部分で書かれている「文化財」という言葉の意味は、非常に感銘する。
国会図書館がなぜ国内で発行された全ての出版物を収集しようとしているのか、「文化財」という言葉に、その思想が全て込められていると思う。1冊1冊を個別に見てみると「こんな本を収集・保存する必要があるのか」と思うものもあるかもしれないが、その時代にどのような本が出版されていたのか、それを網羅し、収集・保存することで、そこから分かることもたくさんあるだろう。1冊1冊はたいしたこと無いものもあれば、すばらしいものもある。それを総体として見ると、それはまさに「文化財」と言えるだろう。
国会図書館がインターネット上の情報を収集するWARPという事業を行っているもの、この思想があるからだと思う。

今回「寄贈礼状」が悪用されたことは残念だが、国会図書館にはこれからもこの「寄贈礼状」に込められた思想を貫いて欲しいと思う。