国会での議論は何だったのか?

遅まきながら、著作権情報センター発行の「コピライト」2005年3月号を読んだが、次のエッセイが掲載されていた。

環流防止措置の導入を受けて
社団法人日本レコード協会 会長 佐藤修
コピライト 2005.3 1ページ

これを読んで、去年の国会での議論は一体何だったのだろうか、と絶望的な気持ちになった。
佐藤氏は、環流防止措置についての反対意見の

我が国は世界に例のない音楽CD等の再販制度を有しており、環流防止措置の導入により海外から安い音楽CDが入らなくなり、国内の音楽CDの価格がさらに高止まりするのではないか。

について

再販制度と環流防止措置とでは法律の趣旨が異なり、別次元の問題である。すなわち、文化の多様性及びユーザーのアクセス機会の確保を趣旨とする再販制度と、日本の音楽文化の海外への積極的な展開を可能とすることを趣旨とする環流防止措置を同一の座標で議論するのは適当ではないと考える。

と、している。
もちろん、これは昨年の国会審議において、当時レコード協会会長だった依田氏が述べていた意見と同じである。
しかし、著作権法改正が可決された時の附帯決議をどう考えるのだろうか。
参議院においては、

 五、還流防止措置の導入により、再販制度とあいまって、商業用レコードの価格が二重に保護されることになるとの指摘等も踏まえ、販売価格の引下げ等消費者への利益の還元に更に努めるとともに、再販制度については、消費者保護の観点から、一層の弾力的運用に努めること。

との附帯決議がなされており、衆議院においては

 七 還流防止措置の運用状況、商業用レコードの国内価格の変動、海外での邦楽レコードの販売状況、商業用レコードの再販制度をめぐる議論その他還流防止措置の必要性並びに消費者及びレコード流通業者の権利利益の保護をめぐる状況について把握するとともに、広く消費者への周知に努めること。
(中略)
 九 還流防止措置の導入により、再販制度とあいまって商業用レコードの価格が二重に保護されることになるとの指摘等も踏まえ、販売価格の引下げ等消費者への利益の還元に更に努めるとともに、再販制度については、消費者保護の観点から、再販期間の短縮等一層の弾力的運用に努めること。

との附帯決議がなされている。
著作権法改正案可決の際には、環流防止措置と再販制度が同一の座標で語られているではないか。
日本レコード協会はこの附帯決議をも否定するのだろうか。

著作権法改正案が可決された後に、前会長の依田氏名義で「著作権法改正法の成立にあたって」というコメントを発表しているが、その中に次のようにある。

また、法案可決に際し衆参両院で付された決議を真摯に受け止め、欧米諸国からの洋楽の並行輸入個人輸入等を阻害するなど消費者の利益が損なわれることのないよう、立法趣旨に則り、制度の適切な運用を図るとともに、音楽ファンへの利益の還元に更に努めてまいる所存であります。

このように、前会長は附帯決議を尊重するとのコメントを発表している。
会長が変わると、そのコメント自体が無かったことになってしまうのだろうか。

いいかげんにしてほしい。