文化財の電子化

Winnyの衝撃(5) 匿名ネットと著作権 京都の文化財、デジタル化で標的に
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2004053100070&genre=C1&area=K00

この記事を書いた人は、著作権について、きちんとした知識を持っているのだろうか?
文化財自体の著作権は、通常保護期間(著作者の没後50年)を終えているものがほとんどであろう。
なので、大半の文化財は、著作権は消滅しており、パブリックドメインとなっているものであろう。
著作権が消滅しているものをデジタル化しても、基本的には新たな権利は生じない、というのが著作権法の一般的な解釈である。
例えば、元文化庁著作権課長の吉田大輔氏は、その著書「明解になる著作権201答」のQ47「アナログ形式の著作物をデジタル化した者には何か権利があるのでしょうか?」に対し「何の権利もありません」と明解に答えている(101ページ)

明解になる著作権201答

明解になる著作権201答

従って、著作権の保護期間の終了したものについては、その複製物であるデジタル画像も当然著作権の保護期間は終了していることになる。

著作権の切れた小説などをデジタル化し公開している青空文庫は、誰もが利用できる。小説などの電子化には新たな著作権は発生しないからだ。
絵画の電子化も本質的には同様なことである。

高山寺右京区)の鳥獣戯画や、建仁寺東山区)の風神雷神図など著名な絵画は、陶器の図柄などに無断転用される例が後を絶たない。

と記事にはあるが、権利が無いのだから、無断転用しても何等問題は無い。
むしろそれを妨害する行為のほうが問題ではないだろうか。
(但し、彫刻などの立体物を写真撮影などで二次元の画像にする場合は、アングルなどに創作性がある場合、その二次元画像には新たな著作権が発生する場合がある。絵画などの二次元の美術品を写真撮影などを行う場合には、著作権が発生しないとされている)

4月27日付けのエントリ(id:copyright:20040427)でも言及したが、文化遺産Onlineも当然著作権の保護期間を過ぎたものが多く収録されているが、文化庁はそれについても著作権を主張している。
所轄官庁がこのようなことだから、京都新聞が勘違いしたとしても仕方ないのかもしれないが。
文化庁は、まず自らが範を示すべきだろう。


追記
メメントのための備忘録
文化財の共有でも同様の指摘がなされている。