参議院・文教科学委員会通過

著作権法改正案は参議院・文教科学委員会で全会一致で可決されたそうです。
ビデオライブラリも見ていませんので、質疑の様子など詳細はよく分かりません。
貸与権と図書館の関連ではいくつか質疑がなされたようです。
審議の中継を見ていた知人がいくつか抜粋してくれましたので、それを紹介しつつツッコミをいれます。

自民党 阿南議員:
公共・大学図書館への適用如何。

文化庁 素川次長:
非営利・無料の場合には権利者の了解を得ずに貸与ができる。したがって公共・大学図書館については、非営利・無料の場合には及ばない。

素川次長の答弁は、「非営利・無料の場合」には貸与権は及ばないとしているので、公共図書館大学図書館であっても「非営利・無料の場合」に当てはまらなければ、貸与権が及ぶ、と言うことでしょうか。
であるなら、小倉弁護士が懸念されるように、私立大学の図書館が「非営利・無料の場合」と見なされない可能性も否定できないかもしれません。

阿南議員:
公立図書館以外の図書館についての適用関係如何。

素川次長:
私どもは設置者がどのような者かを第1のメルクマールにしているわけではない。
非営利・無料かどうかが一番の基本となる。非営利・無料かどうかは個々のケースによる。手数料についてはその額が「無料」に当たるか「有料」に当たるかを個々に判断する。一般的に料金をとっていないときも、全体的に営利かどうかを個々のケースで判断する。設置者が公私かがメルクマールではない。

素川次長の答弁は回答になっていません。どのようなケースが「非営利・無料」に該当し、どのようなケースが該当しないのか、判断基準を明示しないと、実際に貸与を行っている所としては、貸与権が及ぶのか及ばないのか判断できないではないか。

民主党 中島議員:
貸与権について一つだけうかがいたい。
今議論しているのは私的分野での貸出しだが、ヨーロッパで近年急速に拡大してきたと聞くのが、公的分野での貸与権である。地味な分野のものでも多く貸し出されたら、予算化して支援してきたと聞く。EUでは、スペイン・イタリアを残すのみと聞いている。この制度について検討したことはあるのか。

素川次長:
これは公共貸与権、公貸権といわれるものである。ヨーロッパを中心に導入されている。制度は国によって異なり、根拠法、図書館の範囲、補償金の負担者、配分の基準等様々な違いがある。
現行著作権法では、ビデオの貸出しについては公貸権として位置づけてよいかと存じているが、これを書籍に拡大することについては、平成14年度に検討が行われたところである。
著作権制度以外での対応もあり得るということも含め、何らかの制度の導入の必要性には文化審議会内では理解が進んでいる。
ただ、権利者側・図書館側の双方に、制度のあり方を検討したいとの意向があるので、著作権分科会でも見守っている。その上で必要な財源等の整備条件を検討することになる。

著作権制度以外での対応もあり得るというが、著作権制度で対応している国はごく少数の例外であって、ほとんどの国は著作権法とは別の法律をつくっているということを指摘しておきます。
なお、貸与権は図書館とは関係がない、と思われている図書館関係者も多いかと思いますが、貸与権の次は間違いなく公貸権が遡上に上がってくるでしょう。貸与権の問題を図書館とは無関係な問題としてとらえたままでいいのでしょうか。