参議院・文教科学委員会

謎工さんから振られてしまったので、参議院インターネット中継のビデオライブラリーで、貸与権に関するところ以外はとばして見てみました。

うーん、何というか、ツッコミところが満載で、どうしようもないのですが、まずは、次の2点を指摘しておきたいです。

貸与権は、コミックだけに適用されるのではありません。すべての書籍・雑誌に適用されるのです。

貸与権が禁止するのは、営利・有料の貸与だけでなく、非営利・無料以外のすべての貸与、具体的には非営利・無料、営利・有料の貸与も禁止するものです。

レンタルコミックだけを規制したいのであれば、レンタルコミック規制法でも何でも作れば良いでしょう。(それによってマンガ文化が衰退するのなら、それはそれで仕方ない。マンガ好きの人間としては寂しいですが、マンガ家が自分で自分の首を絞めたいというのなら、仕方ないでしょう。自分で自分の首を好きなだけ締めてください)
しかし、すべての書籍・雑誌、非営利・無料以外のすべての貸与を禁止できるような権利を著作権者に与える必要な無いでしょう。
マンガ家という特定の職業の保護は、著作権法の中でやることは無いし、やるべきではない。

さて、個々の発言の中から、気になった点をいくつかピックアップします。

弘兼氏の発言の中で、次のようなものがありました。
「私たちはもっとお金をよこせと言っているのではない。コンテンツ産業を衰退させるなと言っている。」
これはおかしくないか?
お金をよこせと言わないなら、貸与権は必要ないじゃないか。
弘兼氏の主張は、マンガ家が儲からないと、マンガ家になりたいという人材が少なくなる、その結果コンテンツ産業が衰退する、というものだと私は理解したのだが。

それにしても、弘兼氏の発言は全般的に、ちゃんと根拠が示されていないものばかり。
いくらマンガが売れなくなったという数字を出しても、レンタルコミックとの因果関係が示されていなければ、意味が無いでしょう。

自民党阿南一成議員。
「マンガ家の方等に貸与権を認めるのは意義がある」という趣旨の発言をしたが、これは著作権法改正案をきちんと理解していない。
今国会に提出された著作権法改正案は、書籍・雑誌に貸与権を適用させるもので、マンガ家に限らないし、作家に限らない。(雑誌に文章が掲載されたことのある私自身も含めた)すべての著作者に貸与権が認められるのである。
阿南議員は著作権法の基本を理解していない。

民主党鈴木寛議員。
「消費者あっての作家、作家あっての消費者」という発言。
読者を消費者と位置づけることにも違和感を感じるが、それ以上に、作家あっての消費者というのはどうだろう。
貸与権が認められなかったことにより、作家がいなくなったとしても、それはそれで仕方がないこと。
また、今は岡本薫前文化庁著作権課長が言うように「一億総ユーザー、一億総クリエーター」の時代であって、作家と消費者を2分して考えるのは少々時代遅れじゃ無いだろうか。

CDVJの若松氏
書籍・雑誌への貸与権の適用に反対する私としては、若松氏を応援すべきであって、特に私立図書館への影響について発言していただいたことに関しては、とても感謝してるが、一つ、見落とせない発言があった。
「レコード会社には著作隣接権があるので、レンタルレコードの時は流通を通じてコントロールできたが、出版社には著作隣接権が無いので、流通を通じてのコントロールができない」
若松氏のこの発言が、出版社に著作隣接権を付与すべき、という出版社の主張を後押しするような形で使われそうなのが、怖いです。

いずれにしても、質問にたった議員が著作権法をどこまで理解しているのか、非常に心許なかったです。