韓国の貸本

マンガ 世界戦略―カモネギ化するマンガ産業

マンガ 世界戦略―カモネギ化するマンガ産業

久しぶりに本書を読み返してみたが、書籍・雑誌の貸与権の問題について考える上で、とても参考になる。
例えば、韓国の貸本の状況を紹介した部分などもそのひとつである。
書籍・雑誌への貸与権適用の理由の一つに、韓国でのレンタルコミックの状況が上げられる。文化審議会著作権分科会報告書に次のようにある。

韓国においては,レンタルブック店の急増により,「マンガは買って読むもの」から「マンガは借りて読むもの」という意識が浸透し,年間コミックス販売部数の8割は貸本店が購入し,消費者が直接購入するコミックスは,人気上位10から15作品に限られ,部数は全販売部数の2割を占めるに過ぎず,コミックスの販売部数はピーク時の1割から2割に激減したといわれている。韓国においては,貸与権がなく,作家は,書籍の貸与による利益を享受できないだけでなく,コミックスの販売部数にも影響を受けていることから,「まんが貸与権」の導入について議論が行われはじめている。

しかし、夏目氏の「マンガ 世界 戦略」の131ページには、夏目氏が2000年6月に取材のため訪韓した際に、韓国の出版社から聞いた話として次のように書いている。

 しかし、ここでヘンなことを聞いた。韓国には今でも貸本専門のマンガ出版の業界があり、毎月三〇冊にのぼるマンガを独自に出しているというのだ。つまり、貸本マンガは貸本屋だけに流通し、読まれているのである。それまで私は、たんに「売れるべきマンガが貸本になってしまうために売れない」という話だと思って聞いていた。が、貸本マンガという、かつて六〇年代まで日本にもあった独自の出版流通があるのだとすれば、単純に売れる本が貸されるのではなく、書店販売マンガ出版が貸本マンガ出版に競争で負けたという話になりかねない。そんなことが、ありうるのだろうか?

本書の疑問に対して、著作権分科会報告書は何も答えていない。本書が出版されたのは2001年6月で、3年近く前だ。
著作権分科会報告書よりも、ARTSの赤田氏の「韓国同様の貸し本の店舗数増加と販売の減少がおきると言うことは歴史認識の欠落した被害妄想と言うべきである。」(書籍・雑誌等の貸与権に反対する理由PDFファイルより)との主張の方が納得できる。