e-NOVELSへの道

e-NOVELSで連載されている我孫子武丸氏のe-NOVELSへの道で、以前公共図書館の問題が取り上げられたことがあります。
その際にMLに投稿した文章を、こちらにも掲載します。

推理作家らによる小説産直サイトでe-NOVELSというのがあり、そこで推理小説作家我孫子武丸氏が「e-NOVELSへの道」というエッセイを連載しています。
その144回で公共図書館問題が取り上げられています。

http://www.so-net.ne.jp/e-novels/yomimono/enovels-way/144.html

e-NOVELS
http://www.so-net.ne.jp/e-novels/

我孫子氏の主張にうなずける点もありますが、基本的には本が売れない理由を図書館に転嫁しているように、私には思えました。

また「公貸権」と「貸与権」を混同している点も気になります。

「公貸権」とは、公共図書館での貸出による「損失」の補填を受ける権利のことで、その補填は国が行うものです。

貸与権」とは、著作権法第26条の3で規定されている「著作物をその複製物の貸与により公衆に提供する権利」で、出版物については著作権法附則4条の2で「当分の間」適用されないことになっています。また、著作権法第38条の4において営利を目的としない貸与は認められています。

我孫子氏は「公貸権」が認められたら「システムさえ整えば料金の徴収というのも不可能ではないのだが、推理作家協会の理事の間では、それは余り現実的ではないし、上記のような理由で意味がないと考えられている。最も現実的なのは、貸し出し猶予期間の設定だ。」と言っています。
しかし貸し出し猶予期間を設定する権利は「公貸権」ではなく「貸与権」のほうですし、仮に附則4条の2が削除されて「貸与権」が出版物に認められたとしても、上記の通り第38条の4により公共図書館での貸出を止めることはできないと思います。