神奈川県立図書館は立て替え、県立川崎図書館はKSPへ−新聞記事から考える

昨日のエントリで取り上げた、紅葉ヶ丘の神奈川県立川崎図書館の立て替えと、神奈川県立川崎図書館のかながわサイエンスパーク(KSP)への移転について、確認できただけで神奈川新聞と東京新聞毎日新聞に記事が掲載されている。

県立図書館を建て替え視野に再整備 一転、貸し出し維持/神奈川:ローカルニュース : ニュース : カナロコ -- 神奈川新聞社
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1312020018/

神奈川新聞には、カナロコには掲載されていないが、川崎図書館のKSPへの移転の記事も掲載されている。

東京新聞:県立川崎図書館 高津区のビルに:神奈川(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20131203/CK2013120302000115.html

川崎図書館:KSPへ 県が17年度末までに移転 /神奈川− 毎日新聞
http://mainichi.jp/area/kanagawa/news/m20131203ddlk14040199000c.html

なお、神奈川新聞と東京新聞は紙面を確認したが、毎日はwebに掲載されたものしか確認していない。


紅葉ヶ丘の県立の立て替えにしろ、川崎図書館の殿町移転からKSP移転への変更にしろ、基本的には望ましい方向に動いていると思われる。
ただ、記事の中でもいくつか気になる点もある。

紅葉ヶ丘の県立図書館について、神奈川新聞の記事では

また、県立図書館を文化施設が集まる紅葉ケ丘の中核施設と位置付け、「単に本を読む、借りるだけでなく、利用者同士が自由に議論し新しい知見が生まれ、文化的なにぎわいに満ちた魅力あふれる図書館にしたい」と説明。企画展示が可能なスペースを充実させる考えも示し、「圧倒的なマグネット力のある図書館」を目指すとした。

http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1312020018/

とある。
「マグネット力」とは黒岩知事がよく使う言葉であるが、人を引きつける力、魅力のことをそう呼んでいるようだ。
で、「圧倒的なマグネット力のある図書館」と言うことだが、県立図書館がどのような役割を果たした上で、結果的に人が集まるようになると言うことを目指すのであれば、それは望ましいことだと思う。
注意しなければならないのは、県立図書館が果たすべき役割が二の次三の次にして、とにかく人を集めることだけを追い求めるようになってしまうことだ。そうならないように、県立図書館の果たすべき役割をしっかりと主張していきたい。

もう一つは川崎図書館の移転について。
毎日新聞の記事で次のようにある。(この部分は会員登録すると読むことができる)

川崎図書館は自然科学や工学、産業技術などの分野を中心に約50万冊の雑誌・図書を所蔵している。KSPには企業支援に関わる資料を移し、それ以外は建て替えか改修を予定している県立図書館に移す方針。

http://mainichi.jp/area/kanagawa/news/20131203ddlk14040199000c.html

KSPに移転するのは「企業支援に関わる資料」で、それ以外は紅葉ヶ丘の県立図書館に移すとのこと。
もちろん、川崎図書館の企業支援の機能は重要ではあるし、その点を自分もこれまで主張してきた。
しかし、川崎図書館の資料やサービスを企業支援に関わるものと、そうでないものを分けて良いのだろうか? そもそも、分けることができるのだろうか?

神奈川県立川崎図書館は「科学と産業の情報ライブラリー」として長年活動を続けてきている。
そのなかで、例えば青少年向けの「やさしい科学」のコーナーや、サイエンスカフェと言ったイベントなど、直接的には企業支援には繋がらない活動もあるかもしれないが、これらは「科学と産業の情報ライブラリー」という基本方針からは必要な資料や活動だと思う。
これらを企業支援に関わらないという観点だけで分けてしまい、「社会・人文系リサーチ・ライブラリー」である紅葉ヶ丘の県立図書館に移してしまって良いのだろうか。

もし、川崎図書館をKSP移転に伴い企業支援に特化すると言うのであれば、同時にこれまでの、県立が「社会・人文系リサーチ・ライブラリー」で川崎が「科学と産業の情報ライブラリー」という役割分担自体を根本から再構築する必要があるだろう。
「企業支援に関わる資料」のみをKSPに移転するというのであれば、そこまでを視野に入れなければならないが、その認識が県にどれだけあるのか、不安である。

ただ、今回の方針変更は、基本的には望ましい方向であるこことは確かである。
それが懸念する方向に行かないよう、これからも意見を出していきたい。