笹木文部科学副大臣記者会見でのフェアユースについての質疑

12月15日の笹木文部科学副大臣記者会見において、記者から日本版フェアユースについての質問が記者からなされている。

笹木竜三文部科学副大臣記者会見録(平成22年12月15日):文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1300268.htm

記者からの質問でフェアユースについてのものが2回行われている。同じ記者からの質問かどうかは分からない。
1つめの質問は、権利者側が懸念が出されていることについて。

記者)
 先日、文化審議会著作権分科会で著作権法の権利制限、一般規定の導入を求める報告書が示されましたけれども、今後その法改正という形に流れていくと思いますけれども、一方で権利者側からの懸念というのは依然としてすごく強いんですが、こういった不安、懸念を解消するためにどのようなことが必要だとお考えですか。


副大臣
 12月13日の著作権の分科会、大筋この権利制限の一般規定の導入を了承したと聞いていますが、まだこれからですよね、法案、どういう形で詰めていけるのかということは。で、特に、今お話があったようないろんな心配されている団体とか懸念を示されている団体、ただ、こういう団体からも仮に権利制限の一般規定を導入とした場合、こういう留意点があるんだと、留意してほしい点があるんだという、その方針も示されているわけでして、これまでにも。ですからそのことをちゃんと一つ一つ吟味していくと、それでやり取りもさせていただいて、どういう形で煮詰まっていくかという問題だと思っています。それは、向こうから幾つかの留意点が示されている、そこを一つ一つどうお答えしていくかと、それで合意をどう作れるかという問題だと、私はそう思っております。

笹木竜三文部科学副大臣記者会見録(平成22年12月15日):文部科学省

ここでは、権利者側が具体的な留意点を示しているのだから、それを一つずつ対応していくことが重要だと述べている。
この後、別の質問を挟んで、日本版フェアユースの意義についての質疑がなされている。

記者)
 権利制限の一般規定なんですけども、先ほど権利者団体の側の反対という話も出たんですが、一方で利用者の側からはですね、とても意味のある規定だということで導入を求める声は前からありました。これは1970年に今の著作権法ができて以来、初めてそういういわゆる幅のある自由を認めるという話なんですが、そういう意味でこの意義というのは大きいと思うんですけれども、副大臣の口からどうでしょう、その意義というのはどういう意義があるかというのを、是非、質問させてください。


副大臣
 これは先週もちょっと言ったんですが、日本が非常に遅れている現実があると思うんですね、それについては。電子書籍もそうだし。だから、日本だけやらなかったらどうなるかっていうことを考えればもうはっきりするわけで、外国経由でいろいろ広がっていくだけの話なんですよね。もうインターネットの世界、国境を越えるわけですから。ですからそんな中で幾ら国内で何にも新しい対応をしないといっても現実はどんどん進むと、その中で、むしろ日本としてはちゃんと対応をするべきだと思います。それは基本姿勢だと私は思っております。

笹木竜三文部科学副大臣記者会見録(平成22年12月15日):文部科学省

この質疑からは、笹木副大臣の日本版フェアユースについての前向きな姿勢を伺うことが出来る。
笹木副大臣は、日本版フェアユースが求められていることの背景をしっかりと理解しているようだ。
なお、「先週もちょっと言った」というのは、1週間前の12月8日に行われた記者会見において、電子書籍についての質疑がなされているが、多分その時のことを指していると思われる。

記者)
電子書籍の関係なんですけれども、副大臣、非常に何度も急ぐ必要があるというふうにおしゃったんですが、具体的にいつ頃までというふうにお考えですか。


副大臣
私はとにかく速いスピードだと、先ほど言ったように思っていますが、それは外国のいろんな動向を見るとゆっくりやっていられる状況じゃないと、私はそう思っています。ただ、そうは言っても権利の処理の在り方とか、あるいは権利者へのいろんな権利の付与ですね、そのことについては当然、いろんな議論があるわけですから、なかなか、今、前もって何月までにと言えるわけではありません。


記者)
1年ぐらいはかかるかもしれないと。


副大臣
どうでしょう、それは、ええ。とにかく私としては、少しでも早く結論の報告を見たいという気持ちを持っています。


記者)
その結論出していく上でですね、当事者であったり、あるいは有識者の集まりなわけですけれども、やはりある程度方向性というか、政治の判断というか、それがないと、いろんな意見があったり利害が対立していると思いますから、例えば何らかのですね、権利の処理ということであれば、それは法律なり法制度によって整えていくのか、あくまでも業界ルールを作ってもらうのか、その辺りも例えば政治の判断が必要になってくると思うんですが、その辺りの御判断というか、方針を今の時点ではまだお持ちじゃありませんか。


副大臣
今の時点では、もちろんいろんな可能性の選択肢はあるわけですが、まだ何も決めてはいません。すべて決めていて、ただそれをオーソライズするための検討会じゃありませんから。率直にまだまだ聞きたいところはいろいろありますから。確認したいことも幾つかあります。ですから、それをちゃんとやるということだし、いろんな知恵も出てくるんだと思いますから、検討会において。それを踏まえてということです。ただ、何度も言いますが速い早いスピードで方向性は出していくべきだし、それはもちろん政治的な判断も必要だと自覚しています。

笹木竜三文部科学副大臣記者会見録(平成22年12月8日):文部科学省

この記者会見の質疑だけでは、笹木副大臣のスタンスを読み取ることはできないが、スピード感を持って対応しなければならない、という意向は読み取ることが出来ると思う。
それが、著作権をどのような方向に向かわせるのかについて、注意していく必要はあると思う。