「無断引用」はやめて「盗用」か「剽窃」にしよう。

今日、2つのニュースについての報道で「無断引用」の文字が多く目につく。

国立研究所長が「無断引用」、海外の社会福祉論文 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100107-OYT1T00550.htm

国立研究所長が無断引用 社会福祉関係の論文で - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010010701000428.html

無断引用:社会保障・人口問題研究所長が出典明記せずに - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100108k0000m040072000c.html

論文無断引用の国立研究所長「盗用ではない」 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100107-OYT1T01194.htm

我妻「民法」無断引用、大原学園のテキスト : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100107-OYT1T00712.htm

法律書民法」を無断引用 遺族らが大原学園提訴 - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010010701000761.html

無断引用:我妻氏「民法」を大原学園が教材に 遺族が提訴 - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100108k0000m040063000c.html


いい加減、「無断引用」という語をこのような記事の見出しとして使うのはやめようよ。


著作権法における「引用」であれば、著作権者の許諾を無しに行うことができる。つまり「無断」で行っても全く問題ない。
「無断引用」は合法な行為であって、非難されるべき行為では全くない。


上記の記事の場合は「無断引用」ではなく、著作権法における「引用」にはあたらないから問題になっているのではないか。


このように述べると、著作権法の「引用」の定義には該当しない場合でも、一般的に「引用」という場合があるではないか、という反論が出てくるかもしれない。


それでも私は「無断引用」という言葉を、特に報道においては使うべきではないと思う。
「盗用」とか「剽窃」など、他にもっと的確な言葉があるのだから、それを使うべきだと思う。
また、「盗用」や「剽窃」の意味で「無断引用」という言葉を用いると、著作権法の「引用」に該当する行為、当然無断で行う「引用」が、あたかも違法であるような印象を与える事を懸念するからだ。


そもそも、1件めのニュースの国立研究所所長の件については、最初に独自調査に基づいて報じた朝日新聞は「盗用」という言葉を使っている。

asahi.com朝日新聞社):国立研究所長が論文盗用、使い回しも 社会福祉の権威 - 社会
http://www.asahi.com/national/update/0107/TKY201001060438.html

後追い報道が、最初の報道では使われていない「無断引用」という言葉をわざわざ使っているのは、どのような意図があるのだろうか?
著作権法において合法である「無断引用」を、違法であるかのような印象操作を行っているのではないかと疑いたくなる。



何度でも言うが、「無断引用」という言葉を報道において使うのはやめよう。
「盗用」や「剽窃」という言葉を使おう。

引用する極意 引用される極意

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Q&A 引用・転載の実務と著作権法

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クリエーター・編集者のための引用ハンドブック (ユニ知的所有権ブックス)

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