国民読書年と読書バリアフリー法案と著作権

来年は国民読書年らしい。

財団法人 文字・活字文化推進機構 | 読書関連情報 | 2010年を国民読書年に関する決議
http://www.mojikatsuji.or.jp/link_5dokushonen2010.html

文字・活字振興法が成立したときも、しらけた感じしかしなかったし、文字・活字文化振興機構の活動にも全く興味がないし、どれだけの意義があるのか疑問でもある。
例えば永江朗氏が指摘するように、データ上「読書離れ」は生じていない。

読書世論調査データで検証する「読書離れ」のウソ(1)出版不況の本質とは -- 2009/08/31 -- 本と本屋さんの夕日 -- 総合図書大目録
http://www.sogotosho.daimokuroku.com/?index=hon&date=20090831

読書世論調査データで検証する「読書離れ」のウソ(2)本を読むようになった若者たち -- 2009/09/01 -- 本と本屋さんの夕日 -- 総合図書大目録
http://www.sogotosho.daimokuroku.com/?index=hon&date=20090901

だから、文字・活字文化振興機構の活動にはほとんど意義を感じていなかったし、注目もしてこなかった。国際読書年についてもどうでもいいと思っていた。


ところが、この記事を読んで少し考えを変えた。

「じゃあ、読もう。」 国民読書年に向け計画発表 - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009101901000673.html

他にも朝日・読売などで同様の記事が出ているが、この共同通信(とその配信記事をそのまま掲載している新聞)の記事にだけは次の記述があった。

計画では、来年10月に絵本の朗読会や童謡のコンサートを開く記念祭典を開催。障害者や高齢者の読書環境を整備する「読書バリアフリー法案」の来年の通常国会提出を目指す。

(強調:引用者)

http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009101901000673.html

「読書バリアフリー法案」というのがあることを、恥ずかしながら知らなかったが、そういう活動をしているのなら、文字・活字文化振興機構の活動や国民読書年にも意義があるのかもしれないと思った。


そこで「読書バリアフリー法案」について調べて見たら、その法案が見つかった。

読書バリアフリー
http://onyaku.net/bariafree.html

一読してみたのだが、正直微妙だ。
文字・活字文化振興法と同様に、方向性を示しただけの法案のように思う。
もちろん、方向性を示すことの意義は認めるが、これが成立したとしてもどれだけの効果があるかは、少々疑問に思う。
というのも、この法案には重要な事項が欠けているからだ。


読書バリアフリー法案では、国や地方公共団体の責務、出版社の責務、図書館の責務などが盛り込まれていて、附則で図書館法と学校図書館法の改正も盛り込んである。


でも、それでは足りない。最も重要の事項が欠けている。


それは、著作権の権利制限だ。
読書バリアフリーには著作権の権利制限は必須だと私は考える。


本年成立した著作権法の改正には、「障害者の情報利用の機会の確保のための措置」が盛り込まれていて、障碍者のための権利制限がだいぶ実現している。
しかし、これで充分かというとそうではない。

本年度の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第4回)で行われたヒアリングで障害者放送協議会の井上著作権委員長が述べているが、現状の権利制限では一部しか対応できていない。
だから障害者放送協議会は権利制限の一般規定(日本版フェアユース)の導入を要望している。


読書バリアフリーの実現の為に著作権の権利制限を行っても、著作権者には何ら不利な状況は生じないし、経済的な損失も生じないと私は考える。
読書バリアフリー法案には、是非とも、著作権の権利制限の充実、もしくは、読書バリアフリー関連の著作権権利制限の一般規定の導入を盛り込んで欲しいと思う。
それがなければ、真の「読書バリアフリー」を実現するのは難しいと私は思う。


本と人をつなぐ図書館員

本と人をつなぐ図書館員