図書館のFAX送信サービスを求める声

半田正夫氏の新刊「著作権の窓から」を読んだ。

著作権の窓から

著作権の窓から

著作権を題材にしたエッセー集で、時事的な話題なども取り上げていて、読みやすかったので、一気に読んだ。
私は、半田氏は現行の著作権法の条文に忠実で権利保護重視で権利制限には厳格な人だと思っていたし、そのようなエッセーも多かったのだけど、読んでみたら意外とそうではないような意見も書かれていて、興味深かった。


例えば、「国の著作権」を取り上げたところ(148-152頁)では、

著作権が国にあることをタテとして著作権侵害を主張するのは大人気ない態度といわざるをえないのではないか。
(151頁)

とか

法人著作の観念は国に適用されない趣旨を明らかにすべきであったように思われる。
(152頁)

と述べていたり、「カラオケと著作権」を取り上げたところ(195-199頁)では、カラオケ法理として有名なクラブ・キャッツアイ事件判決に対して、結論に対しては異論は無いとしつつも、その論理展開については

あまりにも擬制的にすぎるといえるのではなかろうか。
(199頁)

としていたりする。


しかし、一番驚いたのは「図書館の役割」について述べているところだ。(231-235頁)
31条の内容について述べた後で、「ファックスによるコピーサービス」を取り上げている。(235頁)
そこではファックスでのコピーサービスは公衆送信権が及ぶので著作権者の許諾が必要だとしつつも

しかし、これではきわめて不公平である。図書館に近い人は図書館に赴いてコピーをしてもらえるが、遠い人、とくに過疎地に住む人はコピーサービスを受けることができないということになるからである。

と述べている。そして、国会図書館が郵送コピーサービスを行っていることに対して

法に忠実に従っている点は評価できるが、もう一歩進めてファックスによる送信サービスまで行ってもらいたいと思うが、国の機関である国会図書館にそこまで要求するのはいささか無理というものであろうか。

と述べている。


これは凄いことだ。


というのも、半田正夫氏は日本複写権センターの理事長だからだ。


日本図書館協会は、図書館間で複写物のFAX送信を権利制限に盛り込んでして欲しいと要求を出したことがある。

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第3回)議事録[資料1−1]
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/05050301/001.htm

利用者へのFAX送信ではなく、図書館間のFAX送信だ。それでも、権利者側が反対しているために権利制限規定には盛り込まれていない。
しかし、複写の権利処理の窓口になる団体である日本複写権センターが、利用者に対するFAX送信を行って欲しいと述べているのだから、これは非常に大きい。
図書館関係者には、この半田氏の意見を最大限活用して、図書館間だけではなく、利用者への直接FAX送信まで権利制限に入れられるようして頂きたい。