ブルーレイディスク課金に関する文部科学省・経済産業省の合意内容とJIETAのパブコメ

JEITAブルーレイディスクへの私的録音録画補償金課金に関する政令案についてのパブリックコメントを公表した。

著作権法施行令の一部を改正する政令案への意見」(PDFファイル)
http://home.jeita.or.jp/lip/coment.pdf

著作権法施行令の一部を改正する政令案への意見の提出について
http://home.jeita.or.jp/lip/inf.html

そのパブリックコメントの中に、昨年6月の文部科学省経済産業省の合意文書の全文を盛り込んでいる。情報公開制度により両省から開示された文書だそうだ。*1
JEITAパブコメに盛り込まれた合意文書の箇所から孫引きする。

ダビング10の早期実施に向けた環境整備について
平成2 0 年6 月
文 部 科 学 省
経 済 産 業 省
1.経済産業省及び文部科学省(以下、「両省」という。)は、私的録音録画補償金制度
係る無料デジタル放送の録画の取扱等について、著作権保護技術と補償の必要性等に係
る関係者間の意見の隔たりが大きく、関係者が包括的な合意に至ることが短期間で実現
できる状況ではないと認識している。
2.文部科学省は、著作権法30条2項が著作権保護技術の有無が支払い義務の発生要件
になるかどうかについて明示的に規定していないと認識している。
3.経済産業省は、メーカが、コンテンツの利用を技術的にコントロールすることが可能
な場合には補償金制度の対象とすべきではないとの立場を一貫して主張してきており、
地上デジタル放送の録画に係る機器・媒体については補償金の対象とすべきではないと
考えていることを、認識している。
4.こうした認識の下、現在のブルーレイディスクレコーダーがアナログチューナーを搭
載しておりアナログ放送のデジタル録画が可能であることも踏まえ、暫定的な措置とし
て、ブルーレイディスクに係る専用機器及び専用記録媒体を政令に追加する。
なお、両省は、この政令の施行後3年を目途として、この政令の施行状況等について
検討を加え、その結果に基づいて適切な対応を行う。
5.無料デジタル放送の録画の取扱等私的録音録画補償金制度のあり方については、早期
に合意が形成されるよう引き続き努力する。

http://home.jeita.or.jp/lip/coment.pdf

今回のブルーレイディスク課金は両省の合意に基づいたものだから、その合意内容が明示されないと、政令案の是非を判断することはできないので、JEITAが合意文書を公開したことは評価したい。
逆に言えば、文部科学省経済産業省はなぜこれまで公開しなかったのか。特に政令案を出した文化庁はその合意文書も同時に提示すべきだったと思う。
とにかく、合意文書が公開されたので、それを元にJEITAの意見と、権利者側との争点を検証してみる。

JEITAの意見のポイントは次の3点。

1)未解決の無料デジタル放送の録画に対しては、課金されないことを明確にするように
修正すべきである。


2)失効規定などを追加し、本政令が「暫定的な措置」であり「恒久的措置ではない」こと
を明確にすべきである。


3)本政令で課金の対象としようとしているBDを特定するには、レーザー波長とレンズ
開口数の記載が必要不可欠である。

なお、3)に関しては、ブルーレイディスクの技術的な面の指摘なので、素人の私には判断できないので取り上げない。


まず1)の無料デジタル放送の録画には補償金は課金すべきでは無いとうのは、JETIAの主張としては当然だと思う。

合意文書では、経産省は地上波デジタルには補償金を課金すべきではないという認識であることが明記されている。

3.経済産業省は、メーカが、コンテンツの利用を技術的にコントロールすることが可能
な場合には補償金制度の対象とすべきではないとの立場を一貫して主張してきており、
地上デジタル放送の録画に係る機器・媒体については補償金の対象とすべきではないと
考えていることを、認識している。

JEITAの意見はこの経産省の認識に基づいたものだと思う。

一方で合意文書には、文部科学省の認識として次のことも明記されている。

2.文部科学省は、著作権法30条2項が著作権保護技術の有無が支払い義務の発生要件
になるかどうかについて明示的に規定していないと認識している。

これは、私的録音録画補償金の課金の可否とコピーコントロールの有無は無関係だということだろう。
であるなら、文化庁としては、無料デジタル放送の録画であっても課金対象から外す理由は無いだろう。
権利者側がデジタルチューナのみで補償金逃れのレコーダには「法的処置を」と主張しているのも、文部科学省の認識に立てば理解できる。


結局、文部科学省経済産業省の間で、地上派デジタルの録画が補償金の対象になるか否かの点に限っては、合意がなされていなかったということだ。

現在のブルーレイディスクレコーダーがアナログチューナーを搭
載しておりアナログ放送のデジタル録画が可能であることも踏まえ、暫定的な措置とし
て、ブルーレイディスクに係る専用機器及び専用記録媒体を政令に追加する。

とあるように、アナログチューナーを搭載しているブルーレイディスクレコーダーと、そこで使われるブルーレイディスクへの補償金課金のみが合意されたのだと思う。


では、合意されていないデジタルチューナーのみのブルーレイディスクレコーダーに対しての補償金課金についてはどう考えるべきだろうか。
文化庁としては、文部科学省の認識に基づいているのだから、補償金の課金対象から外す理由は無いだろう。
逆に課金対象から外すと、文部科学省の認識には立たないことになるのだから、逆に外してはならないと考えるのが自然だと思う。

だから、JEITAの意見としては1)の内容は理解できるし、私個人もそうだとは思うが、多分通らないだろうと思う。


しかし、2)についてはJEITAの意見に全面的に正しいと思う。
合意文書の中に施行3年後の見直しが明記されているのだから、それが政令案に反映されていないのはおかしい。
特に、地上波デジタルの録画を補償金の対象とすべきか否かについては合意は得られておらず、文部科学省側の認識に立った政令を出すのだから、この3年で両省の間で認識を統一し、それに基づき政令を改めることは必須だろう。
そのためには3年後の見直しを明記しておかなければならない。
この点については、私もパブコメで意見を出してみるつもりだ。

*1:2月3日のエントリのコメント欄に「匿名希望」氏が情報公開請求で開示されたという合意文書を紹介してくださったが、その内容はJEITAパブコメに盛り込まれているものと同じだった。