ブルーレイディスクに私的録音録画補償金

ブルーレイディスク私的録音録画補償金を課金する方針を文化庁がかためたとの報道がなされている。

ブルーレイ課金は4月から 文化庁方針、メーカー難色 - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/CN/200901/CN2009013001001192.html

Blu-rayに4月から補償金 文化庁が方針 - ITmedia News
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0902/02/news109.html

ブルーレイ課金は4月1日から、文化庁が方針示す
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/02/02/22296.html

記事にも書かれているように、昨年6月17日に経済産業省文化庁の間でブルーレイディスクへの課金は合意されている。
それがようやく動き出すようだ。
合意内容は、大臣会見で触れられてはいるものの、具体的な合意文書のようなものは提示されていないと思う。
そこで改めて両大臣の会見から該当する部分をピックアップしてみる。
まず経済産業大臣の記者会見より。

ダビング10についてですが、予定されていた6月2日(月)の実施が延期をされているわけですけれども、消費者の利便を確保するという観点から、早期の実施が望ましいものであります。オリンピックも近づいておりますし、こうした認識から、事務方に調整を急ぐように私から指示をいたしました。そうしたところ、今般暫定的な措置として、政令改正により、現在市販をされているようなブルーレイディスク私的録音補償金の対象に追加することで、文化庁と合意をいたしました。

 ダビング10の実施日の確定については、総務省の情報通信審議会の場で、関係者間の話し合いが続けられますけれども、この合意がダビング10の早期実施に向けた環境整備の一助となることを期待しております。この措置がというのは、今回のブルーレイの措置がという意味です。

http://www.meti.go.jp/speeches/data_ed/ed080617j.html

(質疑応答)


ダビング10


Q: ダビング10の問題ですが、これは著作権団体がHDDに対しても課金すべしという主張をしていたわけですけれども、著作権料の課金の範囲については、どういった形になるのでしょうか。


A: 暫定措置としてブルーレイに課金するということにしました。これは、既に確立されているはずですが、デジタル化しますとコンテンツの持ち主、つまり送るほうで、これは何回まで、それが幾らと全部設定ができるのです。アナログだとできないのですけれども、デジタルだとできるのですから、送り手の自由自在なのです。自由自在になる環境が整うまで、実際に行為としてダビングが行われ、それを利用する対象について、当面、いわば従来のDVD以外の部分を埋めたということでありまして、これはこれで適切な措置だと思います。


Q: おっしゃった暫定的な期間というのは、今回は明示されてないのですか。


A: 特にされていませんが、私が考えるに、デジタル化でコンテンツ送信をするほうの体制が技術的にはとれるのですから、それが整ったということで新たな体制をどうするかということに入れるのではないでしょうか。

http://www.meti.go.jp/speeches/data_ed/ed080617j.html

次に文部科学大臣の記者会見より。

 私から一つ報告がありまして、いわゆるダビング10の早期実施に向けた環境整備の問題がありますが、暫定的な措置として政令の改正によって、ブルーレイディスク関係の録画機器、記録媒体について、私的録画補償金制度の対象に追加するということで経済産業省と我が省との間で合意をしましたので御報告をさせて頂きます。私的録画補償金制度の見直しは、今まで文化審議会で議論をされてきましたが、早期に合意が形成されるように引き続き努力をするということで、関係省庁として総務省経済産業省文部科学省の意見が一致しています。ダビング10の実施日の確定については、今後総務省の情報通信審議会の場で、さらに関係者間の話し合いが進められると考えているところですが、早期に解決するように期待をしています。


記者)

 報道によると、メーカー側のとりまとめを経済産業省が行ったという内容ですが、権利者側の文化審議会の折衝に対する反応はあるのですか。


大臣)

 はい、まだ必ずしも納得は頂けていないと思っています。今後、先ほど申し上げたように、合意形成の努力をしていくわけでありますが、このことですべて問題が解決したということではありません。あくまで暫定的となっているわけですが、私も詳しくは承知はしていませんが、何よりも、一つはやはり北京オリンピックというものが視野に入っていたと聞いています。それ以前に、少なくとも一定の解決というものをみなくてはいけない。そういう話し合いが行われたと聞いています。当の権利者の方々と話をしまして、そのような議論が行われた結果、少なくとも省庁間では現在このような形で調整が行われているということです。


記者)

 今回、ブルーレイディスクに限定した、暫定的な措置ということで合意した理由を、ございましたらもう少しお詳しくお願いいたします。


大臣)

 これは要するに、補償金制度の見直しについて関係者間の意見が完全に二つに分かれていたと承知をしていますが、その調整は現時点において、なかなかつかないと考えて頂くと良いと思います。従来、例えばDVDについてもこのような形は取られていたわけで、これについても色々意見がありました。今回、次世代のブルーレイディスクについての対応というものがまだ行われていなかったというところから、今回のような暫定的な措置が、一応調整の土俵に乗せられていると考えて頂いたら良いと思います。


記者)

 権利者団体の側は、ダビング10解禁に当たってはこの補償金問題の解決を訴えてきたわけですけども、これによってダビング10は本当に解禁できるというふうにお考えですか。


大臣)

 これは今後の調整ということになると思います。これも申し上げましたように、関係者間で今後より努力をして、話し合いが行われ、そして合意が形成されるように我々としても努力をしていきたい、と考えて頂いたら良いと思います。


記者)

 デジタル放送を録画することについては、今後も補償金の対象とするのかどうか、メーカー側と権利者団体の間でかなり意見が分かれていましたが、2011年以降も補償金制度が続くのかどうか、その点はどのように考えていらっしゃいますか。


大臣)

 これも、これからの話し合いで決定されると考えて頂いたら良いと思います。そのことが今、はっきり決まれば、こういう形の合意にはならなかったと思います。


記者)

 政令の改正は何日付けでしょうか。


大臣)

 関係者と一応調整を行いますから、これからです。


記者)

 ブルーレイディスクは我々の普通の認識としてはDVDと同様ですから、当然、補償金の対象になると思うのですが、それでもダビング10の解禁に向けて調整するということは、結局、権利者団体側が押し切られたという形ではないのでしょうか。


大臣)

 これは今の私の考えで、詰めて申し上げているわけではありませんが、いわゆるデジタルという新しい手法の媒体と、従来のアナログのものを一体として考えるということは適当でないと思います。そこのところを今どうやって整理をしていくか、2011年までの間にそういう作業がやはり残っていると思います。一方、ではそれは一気に解決するかということもあるわけですが、他方、北京オリンピックという世界の大きなスポーツイベントもあるわけですから、それに対して、ユーザー側のニーズを踏まえた上で、結果的に現時点において、このような調整が行われていると御理解を頂いたら良いと思います。私も初めてこの話を聞きましたとき、今の御質問と同じような趣旨の疑問を持ちました。ただ、これはやはり新しい技術ですから、そういったところが一つの焦点になっているのではないかと思います。


記者)

 普通のユーザーからしてみると、権利者やメーカーとの細かい話し合いというよりも、いつダビング10が始まるのかが一番関心のあるところと思うのですが、大臣としては、オリンピックがもうすぐ目の前に控えて、開始の時期にはどうあるべきかということと、今の時点でこういう形で決着したということの受け止めをもう一度お願いします。


大臣)

 これは今もお話ししたとおりでして、例えば大型ディスプレイが波及的に日本の社会で広がったのは、やはりワールドカップのニーズというのが非常に大きかったと思います。あの時期に非常に増えたわけです。そういったことと同じで、今回やはり感動的な場面をできるだけ鮮明な画像で残したいといったニーズが多くあると言われていますし、そういったことによって、自ずと時期が決まってくるでしょうし、また、だからこそこの段階で暫定的な措置が今回図られたのだと思います。


記者)

 今までダビング10の解禁に向けて、この問題の決着と言われてきたのですが、暫定的にせよ、こういう形になりますと、次は2011年までに決着しなくてはいけないということになるのでしょうか。それとも、その前に、ここまでにというタイムリミットはあるのでしょうか。


大臣)

 次は2011年、地上放送の完全デジタル化というのが、一つのポイントになると思います。著作権という観点からしますと、iPodを含めて新たな利用手段というものがユーザーの側に色々と出てきているわけですから、今後どういうやり方でやっていくのか。グローバルスタンダードがはっきりしていれば我が国もそれに合わせてということに間違いなくなっていくと思うのですが、どうもヨーロッパとアメリカとでかなり差があるようですから、そういう中で我が国として今後どのようにやっていくのかというところです。今回はお互いの意見が離れたままこういう形になっていますから、一度ここでクールダウンして、その時期までに、お互いの話し合いをしっかりやる必要があるのではないかと私は考えています。

平成20年6月17日大臣会見概要−文部科学省

読み返してみると、この合意はダビング10を実施する為の緊急避難的なものだったことがうかがい知れる。
そして、この合意の後、「権利者」側はダビング10の実施に合意する訳なのだから、ブルーレイディスクへの私的録音録画補償金課金は既定路線と言っていい。むしろ、6月17日の合意から半年以上経ってようやく動き出したのは、遅すぎるのではないかとも思う。
上で紹介した記事によると、今週中に政令案が提示され、パブリックコメントが行われるらしい。
その中で特に注意したいのは、上記合意内容は、ブルーレイディスクを課金対象とすることは「暫定的な措置」であるということだ。
その「暫定的」ということが、どのような政令案の中でどのような条文となっているのか、特に注目したい。