法制問題小委員会(第10回)傍聴記

本日開催された、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第10回)を傍聴してきた。

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http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h20_10/gijiroku.html

今回の法制問題小委員会は、中間まとめに対する意見募集が行われた後の最初の委員会だった。
議事は、

  1. 法制問題小委員会・平成20年度中間まとめに対する意見募集の結果について
  2. 私的使用目的の複製の見直しについて(私的録音録画小委員会からの報告)
  3. 法廷損害賠償制度について(司法救済ワーキングチームからの報告)
  4. その他

だったが、その他のところで、昨日報告された知的財産戦略本部デジタル・ネット時代における知的財産制度調査会の報告「デジタル・ネット時代における知的財産制度の在り方について」の報告があった。


意見募集(パブリックコメント)の結果については、特に委員からの意見・質問が出ることもほとんど無く、淡々と進んでいった。
松田委員から、薬事関連の権利制限について、昨年の委員会で充分に検討をし一部権利制限を行う方向で結論が出ていた思っていたが、未だに権利制限の要望が出ているのはなぜか、進んでいないのか、との質問があった。
事務局より、平成19年度の中間まとめ(案)の時点で一部権利制限を行うべきと記載したが、その後の意見募集で、出版社側・製薬企業側の双方から、まとめ(案)に事実と違うことが書かれているとの意見が出され、さらに海外からも意見が届いたので、それを踏まえた中間まとめにした経緯がある、との説明があった。
その説明に対し、松田委員と中山主査から事務局に対して、着実に進めるようにとの意見があった。
薬事関連の権利制限は、あまり注目されることは少ないが、松田委員が取り上げてくれた意義ことは大きいと思う。


私的録音録画小委員会の報告については、何人かの委員から意見・質問があった。
松田委員から補償金については当事者が途中で議論をひっくり返したのだから、全員の合意が得られるまで待つのではなく、事務局が主体的に進めて欲しいとの意見があった。
村上委員からは、私的録音録画小委員会の報告は、手続き上、法制問題小委員会として承認する必要があるのかという質問があり、事務局より、プログラムのダウンロード違法化の議論を法制問題小委員会で審議しているので、関連する報告と言う意味で本日報告したとの説明があった。
苗村委員からは、ダウンロード違法化の結論について、委員会として充分に検討した結果このような報告になったことは理解しているが、一方で、法制問題小委員会のパブリックコメントで、ダウンロード違法化については多くの反対意見が有ったにもかかわらず強引に進められている、との意見が資料に記載されている。そのあたりの整合性をわかりやすくして欲しいとの意見があった。
事務局からは、反対意見は確かに多くの件数届いているが、テンプレートに基づいたもので、幅広い意見ではなかった、その意見を踏まえて利用者保護の対応を盛り込んでいるので問題はない、との説明があった。
奇しくもこのとき苗村委員が取り上げた意見は、私が出した意見だったのだが、パブコメに意見を出せば、このように小委員会で委員が目にし、それに基づく審議がなされるということを改めて実感した。それに対する事務局の対応には満足できないが、改めてパブリックコメントを出す意義を実感できた場面であった。
また中山主査から、経済産業省総務省との大臣合意について、その後の進捗状況についての質問があったが、事務局からは、今回の合意は事務方での事前調整を行わずに大臣の間でなされたもので、そのため事後の省庁間調整を行っている段階だ、との説明があった。


司法救済ワーキングチームの報告は、法改正の必要性を認めないものであったが、村上委員、清水委員より質問がなされた。
正直なところ、私の関心の対象外であること、そして法改正にはならないことから、質疑の内容は省略させていただく。


ここまでは、いくつかの質疑はあったものの、順調にというか、淡々と進んでいった。しかし、知財本部デジタル・ネット時代における知的財産制度調査会の報告のあとは、活発というか、激しいやりとりがなされた。
知財本部の大路参事官から報告内容について説明があり、その後、その報告に対して文化庁がどう対応するか、川瀬著作物流通推進室長より説明があった。
川瀬室長からは、今期の著作権分科会の任期は1月までなので、権利制限の一般条項、日本版フェアユースについての審議は、次期の著作権分科会で行う、その間にシンクタンクに委託して、一般条項についての調査研究を行う。その内容は、現行規定の解釈や判例との関連などの基礎的研究、海外の条文などの調査、一般条項を導入するに当たっての論点整理についてで、来期の審議に備えての準備を行う、とのこと。

その後、委員からの意見・質問で主に松田委員から意見・質問がなされた。松田委員の質問には、最初は大路参事官が答えたが、その後は中山主査が答える形になった。
日本版フェアユースやネット法に反対のスタンスでネットワーク流通と著作権制度協議会の会長代行を務める松田委員と、デジタル・ネット時代における知的財産制度調査会の主査でもある中山主査との間での激しいやりとり、といっても松田委員の厳しい質問に対して中山主査がいなす形ではあったが、その様子は次期の著作権分科会での審議の前哨戦のようだった。


最後に、今年度の文化審議会著作権分科会の報告書について、盛り込むべき項目のみ示し、次回、1月16日の法制問題小委員会で審議することが伝えられて閉会した。
パブリックコメントの結果がどのように反映されるか、ダウンロード違法化の対象にプログラムなどが含まれるか否かは、次回の法制問題小委員会で結論が出される。