ネットワーク流通と著作権制度協議会 続報

11月21日付けで発足した「ネットワーク流通と著作権制度協議会」について、11月22日付けで速報的なエントリーを書いたが、同協議会の会長代行に就任した弁護士の松田政行氏の在籍する森・濱田松本法律事務所のサイトに、詳しい内容が掲載されていた。
まず、発足のアナウンス。

森・濱田松本法律事務所 - 2008年11月22日 当事務所弁護士が事務局を務める「ネットワーク流通と著作権制度協議会」が発足
http://www.mhmjapan.com/home/news/mhm00011507.html

このアナウンスの中に、同協議会の事務局が森・濱田松本法律事務所内に設置され、同事務所に在籍する齋藤浩貴弁護士が事務局を担当される旨、記されている。

なお、本協議会の事務局は、現在当事務所内に設置されております。<お問合せ>
ネットワーク流通と著作権制度協議会事務局
〒100-8222
東京都千代田区丸の内1丁目6番5号 
丸の内北口ビル 森・濱田松本法律事務所内
事務局担当理事 弁護士 齋藤 浩貴
tel 03-6266-8503
fax 03-6266-8403

http://www.mhmjapan.com/home/news/mhm00011507.html

また、松田政行氏による「「ネットワーク流通と著作権制度協議会」における私のスタンス」という文書(PDF)が掲載されている。

「ネットワーク流通と著作権制度協議会」における私のスタンス
http://www.mhmjapan.com/_res/usr/1460/20081204_matsuda_mystance.pdf

「私のスタンス」と題されてはいるが、会長代行によるものなので、「ネットワーク流通と著作権制度協議会」の方向性はこの文書の内容と大きく違うことは無いだろう。
発足時の報道では、フェアユースに対する反対がクローズアップされていたが、松田氏の文書では、フェアユースへの反対についても述べられているが、それ以上にネット権構想への反対を大きく打ち出している。
私はネット権構想については、あまり関心が無かったので、この機会に少し調べて見たが、ネット上にJASRACのような仕組みを作ろうというもののようだ。
JASRACは批判されることが多いが、基本的には利用料さえ払えば、著作権者と直接交渉することなく利用許諾か得られるので、音楽の利用手続きを簡便するための存在である。
同じような仕組みを作って、ネット上のコンテンツについて、利用者はそこに利用料を払えば利用許諾を得ることができ、権利者にはその対価が支払われるというもののようだ。
これに対して、松田氏は

私は、著作権法に危機的な状況が来たと思った。
この提言は、ベルヌ条約等の国際条約に真正面から対峙するものであって(私見では同条約に反すると考えている)、これまで国際社会で許諾権(禁止権)として構成されている著作権等を報酬請求権化することは到底できない。また、ネット権者に許諾義務を課するということは著作権法から見ると強制許諾であって、これまた受け入れがたい。

と批判している。
松田氏は、著作権法についてはインセンティブ論には立たず*1、著作人格権を重視する立場で、その観点から、著作権者から許諾の機会を奪うものとして、ネット権構想に反対しているようだ。


なお、この文書には同協議会の発起人と、会長などの人事についても記されている。

発起人
青山 善充(明治大学法科大学院長 教授)
阿部 浩二(岡山大学 名誉教授、著作権情報センター著作権研究所 所長)
市村 直也(弁護士)
伊藤 真(弁護士)
尾崎 行正(弁護士)
神谷 信行(弁護士)*2
川上 拓美(社団法人日本音楽著作権協会 常任理事)
岸 博幸(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授)
桐原 良光(社団法人日本文藝家協会 書記局長)
久保田 裕(社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会 専務理事)
齋藤 浩貴(弁護士)
齊藤 博(新潟大学名誉教授、弁護士)
柴田 未来(NPO 法人エンターテインメントロイヤーズネットワーク理事)
鈴木 道夫(弁護士)
瀬尾 太一(有限責任中間法人日本写真著作権協会 常務理事)
高杉 健二(社団法人日本レコード協会 理事・事務局長)
龍村 全(弁護士)
田中 豊(弁護士)
玉井 克哉(東京大学先端科学技術研究センター 教授)
千葉 憲雄(弁護士)
遠山 友寛(弁護士)
富岡 英次(弁護士)
中川 達也(弁護士)
中村 稔(弁護士)
生野 秀年(社団法人日本レコード協会 専務理事)
橋元 四郎平(弁護士)
半田 正夫(青山学院大学 名誉教授)
美勢 克彦(弁護士)
福王寺 一彦(社団法人日本美術家連盟 常任理事)
藤原 浩(弁護士)
前田 哲男(弁護士)
牧野 利秋(弁護士)
増山 周(社団法人日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター事務局次長)
松田 政行(弁護士)
三田 誠広(社団法人日本文藝家協会 副理事長)
紋谷 暢男(成蹊大学法務研究科 教授)
山崎 卓也(弁護士)
早稲田 祐美子(弁護士)

会長
齊藤 博


会長職務代行
松田 政行


顧問
青山 善充(明治大学法科大学院長 教授)
阿部 浩二(岡山大学名誉教授、著作権情報センター著作権研究所所長)
中村 稔(弁護士)
橋元 四郎平(弁護士)
半田 正夫(青山学院大学 名誉教授)
牧野 利秋(弁護士)
紋谷 暢男(成蹊大学 法務研究科教授)


理事
伊藤 真(弁護士)
岸 博幸(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)
齋藤 浩貴(弁護士)
齊藤 博(新潟大学名誉教授、弁護士)
龍村 全(弁護士)
富岡 英次(弁護士)
藤原 浩(弁護士)
前田 哲男(弁護士)
松田 政行(弁護士)


監事
市村 直也(弁護士)
中川 達也(弁護士)

この協議会の活動についても、注意していきたい。

*1:自由権著作権思想」の立場だと述べている

*2:神谷氏については、氏の著書ついて取り上げたことがある。http://d.hatena.ne.jp/copyright/20050418/p1 http://d.hatena.ne.jp/copyright/20050418/p2