文化庁のアンケート調査に対する懸念

文化庁が実施するアンケート調査は東京大学の太田勝造教授の協力の元に行われる。
先のエントリでも書いたが、太田教授は過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第5回)で「著作権保護期間に関する意識調査」について報告している。

著作権保護期間に関する意識調査について(太田氏発表資料)(PDF形式(242KB))
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/hogo/05/pdf/shiryo_06.pdf

この報告のもとの調査は次の本に掲載されている。

チャレンジする東大法科大学院生―社会科学としての家族法・知的財産法の探究

チャレンジする東大法科大学院生―社会科学としての家族法・知的財産法の探究

両方とも読んでみたのだが、恣意的な解釈をしているように思えてならない。
著作権意識」について、著作権を尊重しないグループに対して「ルーズ層」というネーミングをしたり、「ルーズ層」に対して一罰百戒的な広報をすべきというような提言をしているが、その妥当性には疑問を感じる。
特に、一罰百戒的な広報をすべきという提言に対しては、日本の著作権法は、刑事罰については世界で最も厳しい規定をしている国の一つであること、Winnyの開発者の逮捕やJASRACが訴訟を乱発していることなど、一罰百戒的なニュースが多くある状況をどのように考えているのか疑問に思う。
この調査を行ったグループは、「事実と証拠に基づいた法(evidence-based law)」を主張しているが、私には、evidenceに基づかない恣意的な結論に思えた。
もちろん、私には社会調査を検証できるだけのベースは無く、感情的に反発している部分が大きいのだが。
しかし、今回行われるアンケート調査が今後の著作権行政、著作権法の改正を左右するものであるので、この調査に対しては、文化庁が出す結果と、それによる政策の方向性については、きちんとした検証がされなければならないと思う。
来年の3月末に調査結果報告書が公開されるそうだが、その内容に注目したい。