苦戦する日本の学術雑誌

ノーベル賞の話題の中で、興味深い記事が出た。

小林・益川両氏も論文発表、伝統の学術誌が赤字で廃刊危機 : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20081009-OYT1T00429.htm

ノーベル物理学賞受賞論文が掲載された、国内発行の英文学術雑誌、Progress of Theoretical Physicsが危機にあるとのこと。
Progress of Theoretical Physicsのサイトはこちら。

PTP Homepage
http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~ptpwww/index-j.html

ノーベル物理学賞受賞論文が公開されています。

CP-Violation in the Renormalizable Theory of Weak Interaction
http://ptp.ipap.jp/link?PTP/49/652/

Progress of Theoretical PhysicsはJ-STAGEにも搭載されています。

PTP : Progress of Theoretical Physics
http://www.jstage.jst.go.jp/browse/ptp/-char/ja/

ノーベル物理学賞の南部氏が米国籍であることや、ノーベル化学賞の下川氏が米国在住ということから、日本の頭脳流出が問題になっているけど、論文が掲載される舞台である学術雑誌は海外の有力誌がほとんどで、国内の学協会が発行している学術雑誌はどれも苦戦を強いられていると思う。

今回のケースとはちょっと違うけど、2000年の白川氏、2001年の野依氏と2年続けてノーベル化学賞を受賞した翌年に、日本化学会が発行している日本語論文誌の「日本化学会誌」が休刊になったことを思い出した。

「日本化学会誌」の『休刊』について(お知らせ)
http://www.chemistry.or.jp/journals/nikka/nikka-kyukan.pdf
(PDF)

こちらの方は、日本語論文を書いても業績としてカウントされなくなったことから、論文が集まらなくなって休刊したケースだけど、英語の論文を書いて国際的に有力な雑誌に掲載されなければ評価されないという点では、背景は同じかもしれない。


ノーベル賞の受賞と、その分野の学協会が発行している学術雑誌の隆盛とはあまり関係は無いだろうが、注目されている時だからこそ、このような新聞記事には意味があると思う。

10月10日追記

こういうニュースも。

asahi.com朝日新聞社):ノーベル賞に沸いているけど… 日本の論文数5位に転落 - 社会
http://www.asahi.com/national/update/1009/TKY200810090308.html